モンスター社員の人的被害と解決の経緯

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モンスター社員の存在による悪影響は、厄介なほど多岐に及ぶものです。

たとえば、秩序を乱されることによる指示伝達、報連相の遅れはトラブルに直結します。

お客様対応の不手際はクレームを招き、やる気のなさによる生産性の低下は、ともすれば企業の収益に影響を与えかねません。

そして、モンスター社員が起こし得るもうひとつの不利益に、人的被害が挙げられます。

貴重な人材である社員が、モンスター社員の悪影響のために、職場を去ってしまうということ。これは、決して看過できない重大な損失と言えるでしょう。

そこで本記事では、ある部品メーカー(A社)の間接事務部門で起きた、モンスター社員による人的被害の解決実例をご紹介します。

※プライバシー保護のため、内容を一部改変しております。

モンスター社員による人的被害の状況

A社の間接部門が集まる事務フロアでは、3年前からある問題に悩まされていました。

年末年始などの長期連休が明けるたびに、女性社員のうち1名が、連絡もなしに出勤して来なくなるのです。

そのような社員は結局、退職することになるため、長期連休ごとに社員が欠けるという状況が続いています。

果たして、A社はこの問題に対し、どのように対処したのでしょうか。

長期連休後の出社拒否

ゴールデンウイークが明けたA社では、またしても社員の無断欠勤が問題になっていました。

総務部の若手女性社員が、無断欠勤を続けているのです。

3年前から始まった、長期連休後の出社拒否問題は、今回で9人目になります。

このことを重く見た会社側は、人事課長に事態の収拾を指示しました。

人事課長は欠勤社員に連絡を取ろうと試みますが、電話もメールもつながらず、同僚から送ってもらったLINEにも返信がありません。

これまでのケースとまったく同じ状況です。

結局、今回の欠勤社員も「私物は捨ててください」というメモを添えた退職届の郵送により、顔も出さないまま退職となってしまいました。

社員へのヒアリング

頭を抱えた人事課長は、この事態を打開するため、本格的な調査を開始しました。

最初に取り掛かったのは、間接事務部門の社員一人一人を呼び出してのヒアリングです。

まず、勤続15年のベテラン社員Bに話を聞くと、このような答えが返ってきました。

「女性陣は、みんなでご飯にもよく行くし、本当に仲がいいですよ。私は育休中、みんなに会えないのが寂しくて、早く復帰したいと思っていましたから」

他の社員も、概ね同じような回答であり、ここから答えを導き出すことはできませんでした。

解決の糸口

しかし、人事課長はある社員の一言に、解決の糸口を見出します。

「去年辞めたCさんなら、遠くへ引っ越したはずだから、詳しく話してくれるかもしれませんよ。やっぱり地元にいる人だと、言いにくいこともありますから」

人事課長は元社員Cへ接触を試みましたが、やはり電話やメールはつながらず、居場所を知る社員も見つかりません。

仲の良かった同僚に、LINEでの連絡も依頼しましたが、会社関係者はブロックされているようです。

他に解決の手段を見つけられない人事課長は、人探しのプロフェッショナルである探偵社へCの居所調査を依頼することにしました。

探偵社による元社員Cの居所調査

A社からの情報提供

依頼を受けた探偵は、元社員Cについての情報提供を求めました。

しかし、C自身がA社時代の知人とのつながりを断っている状況でのことです。

A社から提供できた情報は、以下のものだけでした。

  • 氏名、生年月日
  • A社在籍時に撮影された本人の写真
  • 入社時に提出された履歴書と職務経歴書
  • 同僚から聞き出した情報(趣味、ペット)

居住市町村の特定

探偵が着目したのは、ペットに関する情報でした。

同僚の話によると、Cはチンチラという動物を飼っていたというのです。

しかも同僚は、チンチラの色は白、名前はティナということまで覚えていました。

その情報をもとに、探偵が目をつけたのはSNSです。

「ティナという名の白いチンチラ」を手掛かりに、徹底した検索を行い、関連しそうな情報を次々にピックアップしていきます。

やがて、その分析の中から、Cが登録しているSNSアカウントが特定されたのです。

探偵はそのアカウントをつぶさに調べ、Cが暮らす市町村をつきとめました。

勤務先と住所の特定

更にSNSの内容を分析してみると、Cは現在、銀行に勤めているようです。

探偵は独自に保有しているデータベース等をもとに、Cが勤務する銀行の名称と支店を割り出すと自ら現地へ赴きました。

目的の支店を訪ねてみると、Cが窓口で来客対応をしています。

探偵はそのまま支店を張り込み、退社するCを尾行することで、その日のうちに現住所を調べ上げました。

モンスター社員の発覚と全容解明

報告を受けたA社の人事課長が、Cの現住所に手紙を送りましたが返信はありませんでした。そこで人事課長は、勤務先からの帰宅ルートで探偵と共にCを待ち伏せして、ようやくCに会うことが出来ました。説得の末Cはすべてを話す決心をしてくれたのです。そしてついに人事課長は問題の真相を知ることになります。

そこで語られたのは、A社の間接事務部門に潜んでいる、あるモンスター社員の姿でした。

出社拒否の真相

連休後に必ず起こる、社員の出社拒否問題は、ひとりのモンスター社員によって引き起こされていました。

人事課長が社内ヒアリングをした際、真っ先に話を聞いた、勤続15年のベテラン社員Bだったのです。

表向きは、女性社員たちの良きリーダーに見える彼女ですが、裏の顔はまったく違っていました。

職場でのBは、確かに後輩たちを可愛がる、面倒見の良い大ベテランです。

しかし、少しでも気に食わない女性社員に対しては、執拗ないじめを繰り返していたのです。

それは他の女性社員たちへの見せしめとなり、いつしかBは「決して機嫌を損ねてはならないボス」という立場に君臨していました。

モンスター社員の加害内容

Bがその問題行動をエスカレートさせたのは、育児休暇から復職した3年前です。

ターゲットにされたのは、Bの休暇中に入社した女性社員。

自分がいない間に入ったという、ただそれだけの理由でした。

「Bはいじめを始めるとき、ターゲット以外の女性社員を集めて、食事会の企画をするのです。しかもターゲットが気付くように、ひとりずつ声をかけて。それが今日からあの人を無視ね、という暗黙の指示でした」

Cから話を聞いた人事課長は、陰湿さに寒気を覚えましたが、それはまだ序の口でした。

「私も同じことをされて、いじめが始まりました。女性社員が誰も喋ってくれない上に、Bさんからは毎日、聞えよがしの暴言を浴びせられて…。そんなときにお正月休みになって、気が緩んだところに、Bさんから電話がかかって来たんです」

Cはそう言うと、スマートフォンを取り出し、録音しておいたという電話の音声を再生しました。

暴力的な口調ですが、流れてくる声の主は、明らかにBのものです。

そして、話の内容は更に暴力的でした。

「まさか連休が明けたら、図々しく会社に来るんじゃないでしょうね」

「次に顔を見かけたら、本格的にいじめ倒してやる」

「たとえ退職した後でも、会社や私のことを口外したら、SNSに個人情報を晒して炎上させるからな」

「誰かに言ったらすぐにわかる。職場の女性の輪を甘く見るなよ」

「それで、私は連絡先をすべて変えて、地元を離れたんです。でも、ここまできつく脅されたら、地元に残っている人は何も言えませんよ。それくらい、Bさんのいじめは執拗でしたから」

Cは涙を浮かべながら、そう話を締めくくりました。

モンスター社員の認定

会社へ戻った人事課長は、その日から注意深くBを観察してみました。

すると、Bがひとりの女性社員を無視し、きつい言葉をぶつけている様子が見られます。

彼女がおそらく、次のターゲットなのでしょう。その様子は探偵のセッティングで仕掛けた、隠しカメラとボイスレコーダーで、証拠はしっかり押さえています。

人事課長はここまで確認すると、一連の調査結果をまとめた報告書を作成し、Cから送られた録音データを添えて上司に提出しました。

その結果、Bこそが出社拒否問題の黒幕であり、人的被害を与えているモンスター社員だと認定されたのです。

人事課長は総務部長の同席のもと、Bを個室に呼び出し、調査結果について問いただしました。

最初はとぼけていたBですが、音声データや現在のいじめの証拠を突きつけられては、その事実を認めるしかありません。

Bは、気に食わない相手を退職させたときの達成感と優越感が癖になり、いじめをやめられなかったと告白したのです。

人事課長は、9人もの社員を退職に追い込んだことは大問題であり、何らかの懲戒処分を検討するとBに言い渡しました。

翌日、モンスター社員Bから人事課長に、退職の申し出がありました。

懲戒処分の前に、職場を去ることを決めたようです。

人事課長はBに、元社員を含めた関係者に一切の攻撃をしないという念書を書かせ、退職を認めました。

まとめ

今回の実例のように、モンスター社員は時として、会社に甚大な人的被害を与えることがあります。

このようなケースでは、問題行動が浮き彫りになりにくく、早期発見が難しいというのが実状です。

また、誰かから勇気ある告発があったとしても、きちんとした手順を踏み事実を正確に把握しないことには、職場で力を持ったモンスター社員によって、事実がもみ消される可能性や、真実を追求する前にうやむやにされてしまう危険性があります。

問題解決のためには証拠収集を水面下で行い、モンスター社員を排除する正当な理由が必要となるのです。

もしもあなたの会社で社員の出社拒否や離職が急増した際は、根底にモンスター社員の存在がないかどうか、慎重に調査することをお勧めします。

本記事でご紹介した実例が、問題解決のきっかけとなりましたら幸いです。

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