これまでさまざまな契約を経験してきた方でも、契約書に署名・なつ印するときは不安を感じるものです。特にそれが初めての相手で探偵社となると尚更でしょう。
- 料金は適正なのか
- 期待する調査結果が得られるのか
- 悪徳業者ではないのか
疑問や不安を払拭するには、契約関係書類のチェックが不可欠ですが
- 何が書かれているのかよくわからない
- 難しい言葉が多くて面倒
と敬遠する方も多いでしょう。この記事ではそのような方に、初めての契約でも安心して臨めるよう、書類のチェックポイントや契約締結までの注意点、クーリングオフ制度をわかりやすく解説します。
- 契約内容を確認するためには重要事項説明書と契約書のチェックが重要
- 重要事項説明書で特に確認するポイントは3つ、契約書では4つ
目次
契約締結の際に交わす3つの書類
調査依頼契約を締結する際には、以下の契約関係書類を取り交わします。
- 誓約書
- 重要事項説明書
- 契約書
書類は探偵事務所で作成しますので、依頼者は内容を確認したあと署名・なつ印するだけです。
1. 誓約書
調査結果を違法行為や差別的行為に利用しないと依頼者が約束する書類です。
まっとうな探偵事務所は違法行為や差別的行為を助長するような調査に協力しません。
そのため依頼者が調査結果を悪用しない確約をとることを目的としています。
2. 重要事項説明書
重要事項説明書とは、探偵事務所が依頼者に対して、提供できる調査の内容や契約の条件などを説明するための書面です。
記載する内容は、探偵業について必要な規制を定めた探偵業法に定められています。
探偵事務所は重要事項説明書を示して依頼者に内容を説明しなければなりません。
トラブルを避けるため、口頭だけではなく書面を交付して説明し、認識の行き違いを防ぐ目的でもあります。
3. 契約書
探偵業者は、依頼者と探偵業務を行う契約を締結したときは、遅滞なく、契約の内容を明らかにする書面(契約書)を依頼者に交付しなければなりません。
重要事項説明書の記載内容
重要事項説明書の内容は以下のとおりです。(探偵業法第8条第1項より)
- 探偵業者の名称や住所、法人の場合は代表者の名前
- 「探偵業届出証明書」の記載事項
- 探偵業務は法令を順守した業務しか行わないことの確認
- 守秘義務に関する事項と調査資料の不正利用を防止する対策について
- 探偵事務所が提供できる業務の内容
- 調査を他の探偵事務所に委託する場合はその内容について
- 調査費用の概算と支払時期
- 契約を解除する場合の取り決め
- 探偵業務に関して作成、取得した資料の処分について
重要事項説明書のチェックポイント
重要事項説明書の各項目は、どれもしっかり確認する必要があります。
このうち次の3つについては特にチェックが必要です。
1. 探偵事務所が提供できる業務の内容
探偵事務所が行える業務の内容を明らかにします。
探偵事務所と一口にいっても大手から個人まで様々な規模の事務所が存在します。
当然対応できる調査の種類や人数も事務所によって異なりますので、これらを確認します。
具体的な内容
調査の種類
どのような調査を行うことができるか
例:
- 浮気調査などの個人調査のみ
- 個人調査だけでなく、企業調査(社員の素行調査やライバル会社の企業調査、取引先の信用調査など)も対応する
- 企業調査を専門に行う
調査の方法
どのような方法を用いて調査を行うことができるか
例:
- 尾行専従
- 聞き込み、張り込み、尾行に対応できる
調査の人数
おおむね何名で調査を行うか
調査できる地域の範囲
どのような地域で調査を行うことができるか
例:
- 全国で行える
- 関東地方の一定地域に限定など
2. 調査費用の概算と支払時期
基本的な料金についての説明です。
- 調査費用の概算額はどのくらいか(例:尾行〇時間につきいくら、張り込み〇時間につきいくらなど)
- どのような場合に追加料金が発生するか
- 成功報酬の有無
3. 契約を解除する場合の取り決め
探偵事務所や依頼者の事情で調査を途中で終了する場合の説明です。
- どのような場合に調査を打ち切るのか(例:探偵が生命の危険にさらされたとき、またはそのおそれがあるとき)
- 依頼者が調査契約を解約した場合、違約金が発生するのはどのようなときか
- 違約金の金額と支払時期
契約書の記載内容
契約書には次のような事項を記載しています。(探偵業法第8条第2項より)
- 探偵事務所の社名、所在地、代表者の名前など
- 契約を締結した者の氏名と契約年月日
- 調査の具体的な内容、期間、方法
- 調査報告の期限と方法
- 探偵業務を他の探偵事務所に委託する定めがあるときは、その内容
- 依頼者が支払う金額や時期、方法
- 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
- 探偵業務に関して作成、取得した資料の処分に関する定めがある場合はその内容
契約書のチェックポイント
続いて契約書のチェックポイントです。
重要事項説明書ではふれられてはいないが、契約書には書かれている項目があります。
また依頼する調査に関する具体的な項目も記載されます。
契約書ではそれら項目を中心に次の4つを特にチェックしましょう。
1. 重要事項説明書に記載がない項目
- どのくらいの期間調査するのか
- 調査報告の期限と方法(いつまでに報告するのか、どのような方法(書面、メール、口頭など)で報告するのか)
2. 調査の具体的な内容、期間、方法
重要事項説明書では探偵事務所の対応範囲を説明しましたが、契約書ではあなたが依頼する調査の内容が具体的に示されます。
- 調査の対象
- 調査の目的は何か(例:社員の素行調査、取引先の信用調査など)
- どこで調査するか(調査対象者の行動区域全部か一定の区域か)
- 探偵事務所が行える調査手法のうち、どの手法をとるのか
・尾行のみ
・張り込み、聞き込みに加え潜入調査も行うなど - 調査の体制(何名体制で調査するのか)
3. 依頼者が支払う金額や時期、方法
重要事項説明書では調査費用の概算でしたが、契約書では
- 調査料金の合計金額
- 契約時の支払金額
- 着手金の金額と支払期限
- 残金の金額と支払期限
とより具体的な金額が明示されます。
4. 解約に関する事項
- 解約料に関する記載があるか確認する
- いつから解約料が発生するか
重要事項説明書と契約書の違い
重要事項説明書と契約書は項目が似通っている部分があります。
ならばまとめてひとつの書類にすればいいのでは、と思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし、二つの書類は目的や対象、交付時期に違いがあり、書類を分ける必要があります。
重要事項説明書
- 目的:契約前に調査内容や料金がふさわしいかを確認して、契約するか否かを判断するため
- 対象:依頼者
- 交付時期:契約締結前
契約書
- 目的:調査依頼にあたって最終的な同意を確認した後、書面に記録して、探偵事務所と依頼者間での契約トラブルを防止するため
- 対象:依頼者と探偵事務所
- 交付時期:契約締結時
調査契約締結までの流れ
探偵事務所と契約書類を交わすまでには次のようなステップを踏みます。
- 問い合わせ、相談
- ヒアリングやアドバイスのための面談
- 調査プランの提案
- 契約の締結
1.問い合わせ、相談
些細な内容でも電話やメールで問い合わせ、相談してみましょう。
親身になって相談してもらえる事務所は安心です。
むしろ些細な方がその事務所の対応を判断できます。
一方、この段階で強引に面談の日時をセッティングしたり、望んでもいないのに連絡してくる探偵事務所は避けた方がいいでしょう。
2.ヒアリングやアドバイスのための面談
実際に探偵事務所の関係者と面談して詳しい状況を話したり、相談内容に関してアドバイスを受けたりします。
この面談はほとんどの場合無料です。
面談を受ける場合、次の2点に注意しましょう。
面談する場所
通常は探偵事務所で行いますが、自ら希望すれば自宅や職場近くのカフェなどでも面談は可能です。
ただし事務所以外の場所で会おうと、探偵事務所が自らもちかけてくる場合は注意が必要でしょう。
探偵業の届出をしていない違法な業者の可能性があります。
探偵事務所は開業の際に所在する都道府県公安委員会に届け出が必要です。
受理されると「探偵業届出証明書」が発行され、事務所の見やすい場所に掲示しなければなりません。
やたらと外で会おうとする探偵事務所は、この証明書を所持していないため提示できない可能性があります。
違法な事務所に関わらないよう、面倒でも契約までに一度は事務所を訪問し、届出書を確認した方が安心です。
面談の場ですぐに契約を進めようとする事務所
面談後すぐに契約を結ぼうとする事務所は避けてください。
どんな契約であれその場で即決するのは難しいですし、おすすめできません。
納得できるまで検討する時間をもらえる事務所を選んでください。
3.調査プランの提案
ヒアリングに基づいて調査プランと見積書を作成し、依頼者に提案します。
4.契約の締結
提案したプランに納得したら関係書類を交わして契約となります。
調査契約でのクーリングオフ
探偵事務所との契約でもクーリングオフ制度は存在します。
クーリングオフができる期間は、契約を締結した日を1日目と数えて8日間です。
1.クーリングオフの方法
クーリングオフをする場合は、書面またはハガキに必要事項を記入し、契約した探偵事務所に郵送します。
記載する内容については、国民生活センターのホームページで公開されていますので参考にしてください。
2.クーリングオフの対象となる契約は
制度があるからといって、全ての契約をクーリングオフできるわけではありません。
クーリングオフができるケースは以下のとおりです。
- 探偵事務所関係者の意思で、依頼者の自宅を訪問して契約を締結した場合
- 探偵事務所関係者の意思で、探偵事務所以外の場所で契約を締結した場合
- 契約の手続きに不備があった場合(例:重要事項説明がされていない、契約書に不備があったり書面で交付されていないなど)
3.クーリングオフが適用されないケース
- 依頼者が自分の意思で、探偵事務所を訪問して契約を締結した場合
- 依頼者自らが要請して、探偵事務所以外で契約した場合
まとめ
おそらく多くの方は、探偵事務所に調査を依頼することは初めてかもしれません。あまり馴染みのない業種でもある探偵に、調査を安心して任せるためには重要事項説明書と契約書のチェックは欠かせません。
今回の記事では、「探偵事務所と安心して契約するために確認する7つのポイント」をまとめました。調査依頼を検討している会社経営者、担当者の方に参考になれば幸いです。