前科の調べ方8選!犯罪歴・逮捕歴との違いや調査の違法性も解説

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企業において、社員の前科調査は重要です。前科のある人材の雇用は、企業にとってリスクになります。

もちろん、犯罪を犯したことには、特別な理由や事情があるのかもしれませんが、少なくともそのことを「把握しておく」ということは大切です。今回は、前科の定義について確認した上で、具体的な調査方法や注意点についてもご紹介します。

前科とは|犯罪歴や逮捕歴との違い

はじめに、「前科」とは何か、定義を確認します。

「前科」とは、過去に犯罪を犯し、有罪判決を受けたことを指します。「警察に逮捕されると前科がつく」と考えられる場合がありますが、逮捕=前科ではありません。

これについては、刑事手続きの大まかな流れを押さえることで理解ができます。犯罪を犯した場合、警察に「逮捕」され、警察から検察官に被疑者を「送致」し「勾留」、その後に「起訴」されることで裁判が行われ、「判決」が下されます。

最終的な判決が確定するまで、被疑者は「犯罪を犯した疑いのある者」であって、「犯罪者」ではありません。有罪判決が下されることにより、はじめて「犯罪者」と認定されます。

上記の最後のプロセスである「判決」において、有罪の判決を下された場合に、「前科」がつきます。つまり、「逮捕をされる=前科がつく」のではなく、「有罪判決を受ける=前科がつく」ということになります。

前科と似た言葉に、「逮捕歴」という言葉があります。「逮捕歴」は、警察官に逮捕をされた時点でその経歴がつきます。逮捕後に不起訴処分になった場合や、無罪判決を受けた場合であっても、逮捕歴は残ることとなります。

また、「犯罪歴」という言葉もよく使われますが、この言葉は明確に定義が定められたものではありませんが、一般的には「前科」とほとんど同義で使われます。「犯罪歴」は、「犯罪の経歴」であるため、前科同様に犯罪が確定していない「逮捕」の段階では、この言葉は使われません。

なお、「交通違反をした場合でも前科がつくのか?」と疑問に思われる方もいるのではないでしょうか。結論として、軽微な交通違反ではつきませんが、重大な違反を犯した場合には前科がつきます。信号無視やスピード違反、駐車違反などの軽微な交通違反の場合には、定められた期日までに反則金を支払うことによって、刑事手続きを免除することができます。

これらは「交通反則通告制度」と呼ばれますが、これに従い反則金を支払った場合には、前科は残りません。しかし、飲酒運転や無免許運転、人身事故などの、重大かつ悪質な交通違反の場合には、本制度は適用されず、通常の犯罪同様に起訴処分が行われます。また、軽微の場合でも、反則金の支払いがなければ、起訴処分にかけられ、最終的に前科がついてしまいます。

もし「前科」の定義を勘違いしてしまうと、適切な判断ができなくなるかもしれません。あらかじめ押さえておきましょう。

従業員や採用候補者の前科を調べる方法8選

前科の定義が確認できたところで、実際の調査方法を、8つに分けてご紹介します。

調査にはさまざまな方法がありますが、費用や時間、人員や調査能力などに応じて、自社に適したものを選択することが大切です。以下でご紹介する方法を参考に、調査方法を検討してみてください。

1.SNSを調べる

前科調査の方法ひとつめが、「SNSを調べる」というものです。

SNSには多くの情報が掲載されています。本人の情報はもちろんのこと、友人や親類のことについても、SNSで何気なく投稿されている場合があります。前科について、本人が自分自身でSNSに書き込むことはあまり考えられないかもしれません。

しかし、その友人や親類など、入念に調査を行うことで、何か関連する情報が見つかることもあります。ただし、SNSでは噂程度の情報が流れることも多いため、それらの書き込みだけでは判断できません。

2.調査対象の関係者に聞く

次に挙げられるのが、「調査対象の関係者に聞く」という調査方法です。

調査対象者と繋がりのある関係者であれば、前科について知っている可能性があります。しかし、深い関係を持つ友人や親類が、対象者の不利になる前科を証言することはあまり考えられません。そのため、元同僚や元取引先、学生時代の同窓生など、対象者と過去に関係のあった人物から情報を聴取するのが得策です。

直接の聞き込みをすれば、より詳細な情報を知ることができるかもしれません。一方で、これらはあくまでも第三者による情報であるため、信用性は担保できません。たとえば、過去に関係のあった人物が調査対象者を良く思っていない場合には、「前科があると嘘をついてやろう」などと目論むこともあるかもしれません。

関係者からの聞き取りは参考になりますが、知り得た情報はさらに入念に調べる必要があります。

3.インターネットで検索する

前科を調べる方法として、「インターネットで検索する」という方法もあります。

インターネットには、著名人の情報だけではなく、一般人の情報が掲載されていることもあります。調査対象者の氏名やSNSでのニックネーム、通っていた学校名などをかけ合わせて検索することによって、情報がヒットする可能性があります。

インターネットの場合、軽微な事件でも情報が掲載されていることがあります。SNSと併せて、インターネットでも検索をしてみましょう。

ただし手軽に調査ができる反面、インターネットは匿名で誰にでも書き込むことのできるツールであるため、SNS同様に情報の信憑性は高くありません。それだけで判断をせずに、得た情報を手がかりに詳細な調査を進めるなど、インターネットからの情報は参考程度に留めるようにしましょう。

4.テレビや新聞の情報を調べる

テレビや新聞の情報を調べることで、前科について確認できることがあります。

事件が発生した際には、テレビや新聞などのマスメディアが報道を行います。テレビや新聞を調べることで、調査対象者の前科に関する情報が得られるかもしれません。テレビや新聞は専門の記者が取材を行い、報道をします。事実に基づいて事件の逮捕や判決に関する報道がされるため、情報の信用性は高いといえます。

ただしその一方で、テレビや新聞は、社会に影響のある重大な事件についてのみ報道を行うため、軽微な事件は基本的には報道されません。信用性が高いというメリットがある一方で、得られる情報が限られるという点がデメリットです。

5.専門の調査機関に調べてもらう

ここまでは、自社で行うことのできる調査方法をご紹介しました。

しかし、なかには「調査に割くことのできる人員がいない」、「調査能力がない」、「すぐに調査結果が欲しい」、「より正確な情報を得たい」と考えられる場合もあるのではないでしょうか。

特に問題となるのは、情報の信用性です。SNSやインターネット、聞き取りによって、情報を手軽に得ることはできますが、それらの信用性は担保できません。これらを踏まえて、自社での調査が困難である場合には、「専門の調査機関に調べてもらう」というのもひとつの方法です。

探偵や興信所などの専門の調査機関に依頼をすれば、自社の調査のノウハウがなくても、信用性の高い情報を得ることができます。専門の調査機関は、一般には違法とみなされる可能性の高い尾行や聞き取りといった調査方法を、合法的に行うことができ、これらの独自に認められた調査方法と特有のノウハウを活用することで、より詳細な情報を入手できます。

また、前科調査は個人情報にも関わり、プライバシー権の侵害などにも配慮が必要です。自社で調査を行う場合には、法的なリスクも生じることとなってしまいます。専門の調査機関であれば、これらを踏まえた上でプロが調査を行うため、法的リスクも回避できます。

費用はかかるものの、より安全かつ確実に信用性の高い情報を収集できるという点から、専門機関への調査依頼もおすすめです。

6.犯罪経歴証明書を取得する

犯罪経歴証明書の取得ができれば、前科の有無を確認できます。

「犯罪経歴証明書」とは、警察が発行する日本での犯罪経歴について証明をする文書のことです。警察が公的に発行する文書であるため、犯罪の経歴をほぼ確実に知ることができます。

しかし、犯罪経歴証明書は、誰でも手軽に発行できるものではありません。申請には理由が必要で、海外への長期滞在や海外の免許・資格取得を行う際に、外国政府などの公的機関から提出を求められた場合にのみ、発行することのできる証明書です。

そのため「企業に犯罪歴の有無を証明するために発行したい」といった理由では発行できませんが、もし調査対象者が、たまたま犯罪経歴証明書を取得していたという場合には確認ができるかもしれません。

また、国家間の転勤が行われるグローバル企業であれば、これらの証明書を取得することができます。ケースは限られますが、警察から発行される公的な証明書であるため、もし取得できた場合には、より確実に前科について知ることができます。

7.不起訴処分告知書を取得する

公的証明書の類でもうひとつ、「不起訴処分告知書を取得する」という方法もあります。

「不起訴処分告知書」とは、捜査を行っていた事件を不起訴にすることを、被疑者に通告した書類のことです。犯罪を犯した疑いのある被疑者は、警察に逮捕後に検察官に送致され、最終的に検察官が起訴するかどうかの判断をします。

このときに、検察官が不起訴の判断を下した場合には、対象となった被疑者は不起訴処分告知書の発行を請求できます。もし調査対象者に逮捕歴があった場合には、「前科があるのではないか」という疑いが生じますが、このとき、不起訴処分告知書があれば、「犯罪を犯した疑いで逮捕はされたけど、最終的には起訴されなかった」という確認がとれます。

8.国外公的機関の犯歴データを照会する

「国外公的機関の犯罪データを照会する」という方法も存在します。

イギリスやドイツ、フランスなど一部の国では、本人や雇用者が、犯罪歴の証明書の発行を請求できる制度があります。このような犯歴データを政府が公開している国であれば、前科の有無を公的に確認することができます。

公的機関での調査は難しい

上でご紹介した「犯罪経歴証明書の取得」、「不起訴処分告知書の取得」、「国外公的機関の犯罪データ照会」は、いずれも公的機関を通した調査です。

公的機関から確認できる情報は信用性が高く、確認ができれば、より確実に前科歴について知ることができます。しかし、これらの公的機関での調査は難しいのが実状です。

「犯罪経歴証明書」は、先にもご紹介したとおり、外国政府からの要請があるなど特別な事情の場合にのみ発行が認められるものです。

「不起訴処分告知書」は、逮捕後に不起訴となった場合にのみ発行される限定的な証明書です。

「国外公的機関による犯歴データ照会」についても、そもそも調査対象者がその国と接点を持っているかつ、会社自体もその国と繋がりを持つ場合でなければ申請はできません。

信用性の高さは大きなメリットですが、公的機関を介して前科歴を調べることは、一般的に困難であると考えられます。

前科に関する調査は違法か

社員の前科歴を調査することは、会社の人事において非常に重要です。しかしその一方で、「前科に関する調査は違法ではないのか?」と思われる方もいるのではないでしょうか。

犯罪に関する経歴は、『個人情報保護法施行令』によって、「要配慮個人情報」に該当する旨が定められています。「要配慮個人情報」とは、通常の個人情報と比較をして、特別取り扱いに配慮が必要とされる情報を指します。そして、要配慮個人情報を取得するときには、あらかじめ本人の同意が必要であると定められています。

つまり、本人の同意なく前科歴を取得した場合には、違法行為とみなされてしまうおそれがあります。ただし、同法には例外が定められており、「本人を目視、または撮影することで明らかな場合には、同意なく前科歴を取得することができる」という旨が定められています。

法律の解釈が分かれる点ですが、いずれにしても、前科に関する調査は違法行為に該当するケースも考えられます。

前科を調べるときの注意点

前科に関する情報は要配慮個人情報に指定されており、プライバシー権に含まれると考えられています。

プライバシー権や個人情報保護の関係により、前科を調べる際には注意しなければならない点があります。ここでは、前科調査における注意点を、それぞれ詳しくご紹介していきます。

法的制約を遵守する

前科を調べるときに、もっとも注意しなくてはならないのが、「法的制約を遵守する」ということです。

先にもお伝えしたように、前科歴は、プライバシー権によって保護されるものと考えられています。前科歴を誤った方法で入手したり、許可なく共有・公開をしてしまえば、法律に反するおそれがあります。

その他に注意が必要なのは、調査方法についてです。尾行や隠し撮りなど、過剰な調査を行えば、それらの行動自体が法律に触れることがあります。前科を知るための調査で、会社側が違法性を訴えられてしまえば、元も子もありません。法的制約は必ず遵守するように心がけましょう。

調査対象者の同意を得る

犯罪の経歴は、要配慮個人情報に指定されています。そして、要配慮個人情報の取得には、本人の同意が必要であると法律で定められています。

取得に例外規定はありますが、調査対象者から同意を得ていれば、確実に法的リスクを回避することができます。「適切な運営のため」、「信頼性を担保するため」といった名目で、同意を得た上で従業員・採用候補者から同意を得ましょう。

不当な差別をしない

「不当な差別をしない」というのも注意したい点です。前科を持つ疑いのある人材に対して、不安から取り扱いに差別を生じさせてしまうことがあります。

しかし、『日本国憲法第14条』には、「すべての国民が平等で、社会的身分などにおいても差別されない」という旨が記載されており、たとえ前科者であっても、差別的な取り扱いは許されません。たとえば、前科者であることを理由に賃金を下げたり、昇進をさせなかったり、他者とは違う接し方をしたりといったことがあれば、不当な差別と捉えられてしまいます。

明らかに差別と捉えられるような扱いはしないよう心がけましょう。

プライバシーに配慮する

前科を調べるときには、必ずプライバシーに配慮をするよう心がけましょう。個人情報調査は、プライバシー侵害との関連が問題になります。

特定の個人に対して、執拗に尾行や張り込みを行えば、ストーカー行為と認定されるおそれがあります。また、調査に際して、対象者の自宅などの私有地へ足を踏み込んでしまえば、住居侵入罪・建造物侵入罪といった罪に問われます。

前科は個人情報に該当すると考えられるため、法律によって保護されます。調査によって得た前科歴の情報についての取り扱いにも注意が必要です。

信頼できる情報の収集に努める

最後に、必ず押さえておきたいのは、「信頼できる情報の収集に努める」ということです。

前科調査の目的は、人材の見極めです。そのために収集した情報の信用性が低ければ、本末転倒です。信頼できる情報を集め、それらをもとに判断をするよう心がけましょう。

先にも確認したように、自社で行うことのできる調査には際限があり、信頼できる情報を集めることは困難でもあります。リスクを抑えた上で、安全かつ信頼できる情報を収集したい場合には、専門の調査機関への依頼も検討してみましょう。

まとめ

今回は、前科の定義を確認した上で、実際の調査方法や注意点についても確認をしました。

従業員や採用候補者の前科歴は、人事判断をする上で重要な情報です。その一方で、前科歴は、要配慮個人情報に指定されており、調査には配慮が必要です。本人の同意を得た上で可能な範囲で調査を行ったり、専門の調査機関へ依頼をしたりと、自社に適した方法で、適切に前科調査を行いましょう。

この記事が前科調査を検討している会社経営者、企業担当者の方に参考になれば幸いです。

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