- 被害届の提出や刑事告訴をしても警察が積極的に動いてくれるとは限らない
- 逃げた人間を探すためには素早い対応と効率的な調査が勝負
- 確実に探し出すためには調査のプロに依頼するのが一番
会社の金を持ち逃げ、横領、着服(以降まとめて持ち逃げと記します)などが判明したが、行った人間は行方がわからない。
- 逃げた人間を探し出してお金を取り返したい
- 警察に届けを出したが動きが鈍く、発見できない
- ならば自分で探し出したいが、どうすればいいのだろうか
こうして悩んでいるうちに時間だけが経過し、結局逃げ切られてしまったケースが多く見受けられます。
そこでこの記事では、家出人や行方不明者なども含め、人探しに長年携わってきた弊社の探偵が、持ち逃げした人物を探し出すために必要な情報や対応、
具体的には
- 持ち逃げが判明したらやること
- 警察捜査の現状
- 逃げた人間を探し出す方法
などをわかりやすくお伝えします。
目次
1.持ち逃げが判明したら対応すること 8選
(1)行方不明者届を警察に提出する
たとえ証拠がなくても、持ち逃げしたと思われる人間が行方不明になった時点で、すぐ警察に「行方不明者届」を提出しましょう。
持ち逃げが判明していなくても、従業員がいなくなった事実は変わりません。行方不明の原因が犯罪に巻き込まれたためとも考えられます。
なお届出の際には、以下の情報をあわせて伝えましょう。
- 出社しなくなった日、またはいなくなったのが判明した日
- 最後に行動が把握できている場所
受理されれば警察のデータベースに登録され、全国の警察で共有されます。
パトロールや職務質問など警察官の活動の中で発見されるかもしれません。
(2)持ち逃げの証拠を収集
逃げた人間が持ち逃げした証拠を集めましょう。
懲戒解雇や刑事告訴、損害賠償請求など、どのような対応を取るとしても証拠は不可欠です。
証拠には以下のような例が該当します。
- レジからお金を抜き出している様子が写っている防犯カメラの映像
- 改ざんされた帳簿
- 勝手に引き出されていることが記録された通帳
- 偽造された請求書
なお、探偵は証拠集めのプロです。
どのように証拠集めすればいいかアドバイスを求めたり、調査自体を探偵に依頼したりするのもひとつの方法です。
(3)他の従業員への聞き取り
他の従業員から逃げた人間に関する情報を聞き取りましょう。
逃げた人間に何らかの変化があったか、あればいつ頃からかなどを聴取します。
急に羽振りがよくなったなど変化の時期がわかれば、会社の金に手をつけ始めた時期を推定できます。
(4)持ち逃げされたお金の実態把握
持ち逃げされたお金が
- 会社のどこに保管していたか
- どのような性質のお金か
- なくなった金額はいくらか
- いつごろ持ち逃げされたのか
をできるかぎり調査し、被害の実態を把握します。
(5)持ち逃げを警察に届け出る
状況を把握したら、警察に被害届や告訴状を提出しましょう。
会社の金を持ち逃げした場合は、業務上横領罪や窃盗罪が成立します。
被害届の提出
被害届は、被害者が犯罪被害に遭った事実を警察に申告する書類です。
あくまで被害に遭った事実を伝えるためであり、犯人の処罰を求める意思を表明した書類ではありません。
また被害届では、受理しても捜査するかに関しては警察の判断に委ねられます。
刑事告訴ー告訴状の提出
刑事告訴は、被害者が捜査機関に犯罪に遭った事実を申告して犯人の処罰を求める手続きです。
捜査機関が告訴状を受理した場合には、捜査を開始する義務が生じます。
ただ警察へ届け出をしようとしても受理されなかったり、受理されても積極的に動いてくれなかったりする場合がありました。
どのようなケースで警察は動かないのかは、次項の「2.持ち逃げを届け出しても警察が動いてくれないケース」で解説します。
(6)身元保証人へ損害賠償請求
持ち逃げした人間が見つからない場合でも、証拠があれば身元保証人に損害賠償の請求が可能です。
現在では雇用契約の際に、身元保証書の提出を求めて身元保証人を設定する場合があります。
持ち逃げに限らず会社に損害を与えた場合は、身元保証人に損害賠償の請求が可能です。
ただし、民法の改正により2020年(令和2年)4月1日以降に締結された身元保証契約では、賠償額の上限を決めることが企業に義務付けられています。
仮に持ち逃げされた額が上限を超えていても、定めていた上限以上の金額を身元保証人に請求できません。
(2020年(令和2年)4月1日より前に交わされた身元保証契約の場合は法律改正前のため、賠償額の上限という規定は適用されません)
(7)持ち逃げした人間の解雇
持ち逃げが発覚した場合、逃げた人間を解雇できます。
ただ解雇が不当解雇にならないよう注意しなければなりません。
まずは就業規則を確認しましょう。
就業規則の解雇や懲戒解雇事由に、横領や着服などの規定があれば問題ありません。
規定がない場合でも、持ち逃げは会社に対する非違行為にあたるため普通解雇できる場合が多いと考えられます。
ただ不正にお金を取っていた期間や被害の金額、弁済の有無などにより状況は変わりますので、法務担当者や弁護士と相談しながら進める方がいいでしょう。
注意点:被害額を解雇前の給与で相殺できない
解雇前の給料から被害額を天引きすることはできません。
労働基準法に規定された「賃金全額払いの原則」に反するためです。
源泉徴収や社会保険料の控除など法令で認められた項目以外は、賃金の一部を差し引いて支払うことが禁止されています。
(8)持ち逃げされた額の経理処理
持ち逃げされた額は雑損出として損金算入できます。
発覚した時点で法人には損失が発生しているからです。
たとえば100万円の現金を持ち逃げされた場合、以下のような経理処理になります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
雑損失 | 1,000千円 | 現金 | 1,000千円 |
また得意先の売掛金500万円を持ち逃げされた場合は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
横領損失 | 5,000千円 | 売掛金 | 5,000千円 |
未収金 | 5,000千円 | 損害賠償金収入 | 5,000千円 |
横領が発覚した際に損失として横領損失500万円、収益として損害賠償金収入500万円の両建てとなります。
もし損害賠償金の回収ができなくても、一定の要件を満たせば、貸倒損失として損金算入が可能です。
経理処理にあたっては、持ち逃げされた事実の証明が必要となります。
被害届の提出が証明になりますので、提出時に受付印を押した書類をコピーしてもらい保存しておきましょう。
2.持ち逃げを届け出しても警察が動いてくれないケース
持ち逃げは犯罪ですので警察が動くのは当然と考えるでしょう。
しかし実際には警察が届出を受理してくれない、あるいは受理したが積極的に動いてくれないケースもあります。
具体的には以下のとおりです。
(1)届出を受理しないケース
身内が持ち逃げした場合
持ち逃げは窃盗罪に該当しますが、家族間では窃盗罪は成立しません。事件として成立しないため、警察は動くことができません。
持ち逃げの事実を証明できない場合
届出は被害者の申告で受理されますが、どんな場合でも受理されるわけではありません。
たとえば、従業員に1,000万円持ち逃げされたと申告しても、1,000万円が会社に存在した事実と、その従業員が持ち逃げした証明を求められます。
ただし、持ち逃げした人間が特定できない場合やその人間が持ち逃げした証明ができない場合でも、被害に遭った事実を証明できれば受理される可能性があります。
(2)警察が積極的に動いてくれないケース
重大事案でない場合
持ち逃げは少額であっても犯罪です。
ただ警察は毎日多数の事件を抱えていますので、すべての事件に着手できるわけではありません。
事件の重要度によって優先順位がつけられます。
被害が多額である、社会的に影響が大きい、凶悪事件の可能性があるなどの事情がなければ、金額の少ない持ち逃げは後回し、または手を付けられないケースが見受けられます。
3.自力での調査における注意点
警察の動きが鈍いときや会社の事情で調査を依頼できないときもあります。
その場合、自分たちで探し出そうと考える方もいらっしゃるでしょう。
そこで調査の際に押さえておきたい点をお伝えします。
〇時間との勝負になる
持ち逃げが発覚したらどれだけ早く調査に着手できたかがカギです。
時間が経過すればするほど、逃げた人間の行方を捜索する難易度は高まり、使い込みなどによって失った金額の回収も難しくなります。
前述した「1.持ち逃げが判明したら対応すること 8選」を参考に、できることを判断してすぐに行動を起こすことが重要です。
〇自力での調査は困難を極める
逃げた人間を自分たちで探し出すのは難しいといわざるを得ません。
調査は時間と手間がかかります。
通常の業務をこなしながら、片手間でできるものではありません。
まして調査の経験がなければ、何から手をつければいいか検討もつかないのは当然です。
そこで皆さんでもできる調査方法を次項でご紹介します。
4.逃げた人間を自力で調査する方法 4選
自力で調査する場合の具体的な方法は次のとおりです。
(1)SNSのチェック
逃げた人間がSNSに登録していれば、関連する情報をつかめる場合があります。
①Facebook
Facebookは、本名で登録するのが原則です。
サイト上部にある検索窓に本名を入れれば当人のページを発見できるかもしれません。
なお検索タブは「人物」になります。
氏名はファミリーネーム(名字)やファーストネーム(名前)だけでも検索可能です。
ファーストネームとファミリーネームの順番を入れ替えると検索できる場合もあります。
ニックネームや出身地、出身校、居住地、勤務先、趣味、よく行く場所などでも検索可能です。
逃げている人間が実名のアカウントで投稿することは考えにくいですが、過去の投稿をチェックすることで逃亡先の手がかりやヒントがつかめるかもしれません。
②X(旧Twitter)
Xでは2つの利用法が考えられます
その1 逃げた人間の情報を発信し、情報提供を求める
逃げた人物の情報を投稿し、情報提供を呼びかけます。
当人に関する、次の情報を投稿しましょう。
- 当人の顔写真や映像
- 身長や体重
- 身体的特徴:
あざやほくろ、傷の位置や特徴など - 拡散を呼びかけるハッシュタグ:
人探しのハッシュタグは「#人探し」「#行方不明」「#拡散希望」などです。 - 情報提供の連絡先:
連絡先は警察にしておくのがいいでしょう。捜索の目的がストーカー行為やDV被害者の捜索でないとわかるからです。Xを利用する場合は事前に警察に届け出をしておきましょう。
その2 当人の投稿をチェックして、逃亡先などの手がかりをつかむ
アカウントやハンドルネームがわかっていれば、過去の投稿をチェックして逃亡先のヒントや手がかりを得られる場合があります。
(2)行方不明者用のネット掲示板
「行方不明者 掲示板」で検索すると、様々な掲示板サイトを確認できるでしょう。
サイトに投稿することで情報が寄せられるケースがあります。
(3)ポスターやビラ
ポスターやビラを作成して、通行人に配ったり許可を得られた場所に掲示したりして情報提供を呼びかけます。
なるべく多くの人に認知してもらえるように、配布は駅や繁華街などで行い、人通りの多い時間を狙って行うのがよいでしょう。
(4)新聞広告
ネットが普及するまでは新聞広告が人探しの有力な手段でした。
ポスターやビラは地域が限定されますが、新聞広告は全国に伝えられます。
広告は「三行広告」が使われ、地方紙は1回約1,000円、全国紙は約8,000円~1万円が相場です。
掲載依頼は広告代理店に行いますが、全ての代理店が対応するわけではありません。
「新聞広告を扱う代理店」で検索すると対応できる代理店を調べることができます。
5.プロの力を結集させる
持ち逃げした人間を探し出し、お金を取り戻すためには、対応すべき分野は多岐にわたります。
そのため事件の解決にはプロの力を結集させることが不可欠です。
それぞれ役割として具体的には、
- 被害届や刑事告訴のアドバイス、損害賠償請求や示談を担当する弁護士
- お金の流れや被害額を算定する会計士や税理士
- 証拠や証言を集める、逃げた人間の行方を調査する探偵
この中で、すべての行動の出発点となるのは、証拠や証言の収集と逃げた人間を探し出すことです。
警察への届け出には証拠が必要になりますし、損害賠償や示談などの法的手段をとるためには、逃げた人間の居場所を突き止めなければなりません。
証拠収集と逃げた人間の確保を担当するのは探偵です。
まず探偵に相談してみるのが、解決への第一歩といえるでしょう。
6.逃げた人間を探すのはプロに任せましょう
逃げた人間を探すのは調査のプロである探偵に任せましょう。
探偵は、家出人や行方不明者の捜索などを通じて人探しのノウハウに精通しています。
調査を開始する前には状況に応じた計画を作成し、この計画に基づいて調査します。
やみくもに動き回るより、効率的に調査を進めることができます。
逃げた人間の心理も熟知しており、立ち寄りそうな場所や時間などを判断して調査します。
7.探偵に調査を依頼する際に大事な点
調査を依頼する場合は、情報の質を自分で判断せず、些細な情報でも漏れなく探偵に提供してください。
成功率を高めるためには情報がカギです。
情報が多ければ多いほど発見できる確率が高まります。
役に立たない情報と思われた情報でも、解決への糸口となったケースがこれまで多々ありました。
具体的には以下の情報をまとめて伝えてください。
- 逃げた人間の氏名、住所、生年月日
- 本人の写真や映像
- 身長、体重、髪型、身体的特徴(傷やあざ、ほくろの位置など)
- 乗っている車両の写真、車種、ナンバー、色
- よく通っていた場所(馴染みの店、行きつけのスナック、通っていたスポーツクラブなど)
8.探偵の調査方法
調査のプロはどのように調査を行うか、調査に支障のない範囲で紹介しましょう。
(1)わずかな痕跡からの調査
逃げた人間が残した痕跡から行方を探ります。
具体的には逃げた人間のデスクまわりのうち
- 当人が残したメモ
- 本の中や書類の間にあった紙
- 保存してあるチラシや新聞
- 読んでいた雑誌(特に旅行雑誌や求人誌)
- ゴミ箱の中のレシート類
などをチェックします。
このとき探偵はわずかな痕跡も見逃しません。
わずかな痕跡でもパズルのように組み合わせることによって、有力な手がかりを得られる場合があります。
(2)聞き込み
逃げた人間の関係先や関係者に対して聞き込みを行います。
探偵はただ質問するだけでなく、情報を引き出すためのテクニックを身につけています。
たとえば見知らぬ人間が「〇〇さんの情報を教えてください」とたずねても、答えてくれる人はほとんどいません。
そこで探偵は、親戚や友人、同僚など逃げた人間の関係者であることをにおわせて情報を引き出します。
あわせて質問を受けた人が不自然に思わないよう、逃げた人間との背景やストーリーを用意してから聞き込みに臨みます。
(3)関連人物の尾行・張り込み
逃げた人物と関係が深い人物をピックアップし、手がかりを得るために尾行や張り込みを行います。
あわせて逃げた人物と接触がないかも確認します。
9.まとめ
ここまで持ち逃げした人間を探し出すために、判明したらやることや警察が動いてくれないケースがあること、探し出す方法などを説明しました。
逃げた人間を探し出すためには素早い対応と効率的な調査が不可欠です。
しかし自力での調査には限界があると言わざるを得ません。
やはり「餅は餅屋に」のことわざどおり、調査は探偵にまかせるのが得策です。
探偵事務所では、初回の相談は無料で行っているところがほとんどです。
まずは気軽に相談してみてはいかがでしょうか。