事業主にとって、目の届きにくい支部や支店で起きる社内不正や社内犯罪をどのように管理するかは、とても大きな問題です。
支部や支店、そして管理者の不在時間が長い事業所・店舗は、社内不正が発生しやすいため、予防と実態把握を常に同時並行で行う必要があります。
この記事では、管理者の目が届きにくい環境にある事業所の社内不正・社内犯罪について、予防策や注意点を社内不正調査の専門家が解説します。
社内不正調査を外部委託する際の、上手な利用についても触れていますので合わせてご一読ください。社内環境整備の一助となれば幸いです。
目次
目の届きにくい支部・支店は社内不正・社内犯罪が起こりやすい
事業所内や店舗での社内不正・社内犯罪には、主に横領やハラスメント、内部情報の流出といったものがあります。
これらの問題は、さまざまな要因によってどこの事業所でも発生する可能性がありますが、管理者の目の届きにくい支部や支店、そして管理者の不在時間の長い事業所ではそのリスクが高くなります。
現金や情報の持ち出し、資金の不正操作、従業員同士のハラスメント問題に多くの経営者が悩まされているのが現実です。
社内の不正や犯罪はそのままにしておくとエスカレートし、業務や経営にまで支障をきたしかねません。管理者は、しっかりと何かしらの対策をとってください。
ただし、組織内で起きる問題解決には特有の難しさがあります。従業員については信頼するのが前提ですが、信頼しすぎが問題につながったり、反対に色眼鏡で見ることで雇用者と従業員の間に溝が生まれることがあるからです。
そんなことから、問題を認知しても具体的な対策に移れずに放置してしまうケースも珍しくありません。
社内不正・社内犯罪の予防や対策、そして調査は、従業員との関係や事業所全体の状況を鑑みて、その加減をどのように取るかが肝になります。
社内でできる目の届きにくい支部・支店の社内不正・犯罪予防策
まずは社内でできる社内不正・社内犯罪の具体的な予防策についてみていきます。できることから丁寧に実施して、目の届きにくい支部や支店でのトラブルを防いでください。
コンプライアンス意識の教育
社内不正や社内犯罪の予防対策に、支部や支店の従業員に対して定期的なコンプライアンス教育の実施が有効です。
従業員のバックボーンや経歴はそれぞれです。「何をもって問題となるか」や、「問題に対するペナルティがどんなものであるか」の認識には個人差があります。
経営者側の常識がそのまま従業員の常識と一致しているわけではないということです。
そんなことから、社内不正や社内犯罪について、すべての従業員にしっかりと意識付けをすることが、予防の第一歩になります。
何が問題になり得るのかということを繰り返し伝えることで、本人の行動はもちろん従業員同士がお互いの行動を止め合う意識作りにもなります。
抜き打ち調査を定期的に実施
社内不正や社内犯罪は、それがやりやすい環境になれば発生の可能性は上がります。経営者側としては、社内環境整備の一環として不正や犯罪が起きにくい環境を提供する必要があります。
そのため、普段管理者のいない事業所や目の届きにくい支部・支店には、抜き打ちの調査を継続的に実施する方法がおすすめです。
帳簿のチェックや、従業員の聞き取りなど出来る範囲の調査を行い、そこで問題や何か疑わしい事象がみつかれば次の調査に進めます。
抜き打ち調査によって問題の早期発見が可能になるのと合わせて、「いつでも調査に入る可能性がある」と従業員が意識することで、問題を起こしにくくなるため予防策にもなります。
不正を上申しやすい環境整備
社内で起きている問題を上申しやすい環境にしておくことはとても大切です。
上申できる場がないと、社内不正・犯罪の情報を持っている従業員は通報ができません。それを不服に感じて士気が下がることがあります。
また、社内通報システムがないことで社内より先に外部の団体に働きかけたり、昨今では、SNSを用いて社外にその内容をオープンにするケースもみられます。
そうなれば問題はどんどん大きくなりますので、対応がそれに伴って難しくなります。経営者は内部通報窓口を設けたり、定期的な個人面談で問題を吸い上げるといった対策を講じる必要があります。
通報を受けるシステムが敷居の高いものであったり、通報を受ける窓口に問題と関わりのある従業員がいるなどで、通報したい従業員の行動が妨げられることがないよう、くれぐれも注意してください。
また、支部や支店の従業員や、アルバイト・パート従業員の中には通報の仕方がわからず自分で抱え込んでいるケースもあります。内部通報窓口の存在をできるだけオープンにしたり、声がけを行って不正や問題を上申しやすい環境作りに努めてください。
調査会社など外部の業者による調査の利用
社内不正・社内犯罪の予防と調査には、調査会社など外部業者の調査が役立ちます。外部業者の調査が利用されるのは次のようなケースです。
・組織内の不正・犯罪の予防方法や調査方法がわからない・もしくは難しいと感じている
・専門的な調査を必要としている
・社内不正・犯罪の予防対策や調査を外部に任せてしまいたい
ほかにも、問題が複雑で手をつけにくく膠着している場合や、専門的な調査を必要としているケース、また社内不正・犯罪の調査や予防にかかる人的・精神的負担を軽減したいと組織が望んでいるケースには、外部調査の利用を検討してみるとよいでしょう。
支部・支店の社内不正・犯罪調査で気をつけるべきこと
支部や支店の社内不正・犯罪調査を実施するときに注意しなければならないことがいくつかあります。そのひとつが、公平性の担保です。
目の届きにくい支部や支店、そして管理者不在時間の長い事業所では、そこにいる従業員の普段の行動を把握するのは簡単ではありません。そのため、通報を受けたとしても、事実把握の見極めが困難です。
社内調査で、聞き取りや状況証拠収集を実施する際は、相手の立場や態度にとらわれず、とにかく公平性を持って対応してください。
大方の場合、従業員である個人は組織内で起きている問題そのものよりも、自分自身の処遇や立場を守ろうとする意識の方が勝っています。その心理を理解して、調査や予防にとりかかる必要があります。
調査会社など外部業者の調査を利用することのメリット
社内不正・犯罪の調査や予防対策におすすめの外部調査ですが、その実態やメリットがはっきりとわかないことから利用を迷われているかもしれません。
メリットをしっかりと理解することで、現状のニーズに合った利用ができて納得のいく問題解決に進みます。
ここからは、調査会社など外部業者の調査を利用することのメリットについて詳しくみていきます。
従業員との信頼を保ちつつ適切な調査ができる
経営者にとっても、従業員にとっても、働きやすい環境が理想です。そのために、組織として社内不正や犯罪を無くす努力をすることになります。
ですが、そのパトロールや対策を実行する側と、受け取る側の両方が社内の人間であれば、受け取る側の従業員は「組織に信頼されていない・疑われている」と感じて、心理的に負担が生じます。それが働く意欲の低下につながることがあり、そうなれば組織としてはマイナスです。
組織側が組織全体のためにやったことが、別の問題を生む可能性があるのです。そうならないために外部業者を利用した調査が役に立ちます。
社内で行う内部調査と合わせて、外部業者を使った調査を利用することを従業員にオープンにすれば「組織は外部調査を交えて公平に取り締まることで従業員および働く環境を守ろうとしている」と意識づけることができます。
また、組織内は閉鎖的な空間であり、なし崩し的に不正や犯罪が起きやすい環境とも言えます。そこに外部調査が随時入ると警告することで、従業員同士が自然に行動を抑制し合いますので、不正・犯罪の抑止力になります。
外部調査によって、組織は従業員との信頼関係を保ちつつ、しっかりと不正や犯罪対策が行えます。
問題の予防・早期発見ができる
組織にはその組織特有のやり方や社風があり、それによって社内不正・犯罪の芽に気づきにくくなっていることがあります。
そこで、外部業者を利用して第三者目線を取り入れることで、不安分子や問題を早期発見することができます。
目の届きにくい支部や支店で起きる社内不正や犯罪は、一般的にその発覚に時間がかかります。物理的なハードルはもちろん、本部とのパイプになる張本人の支部や、支店の管理者が不正に関わっていれば、隠蔽されやすいといったことがあるからです。
これを防ぐには、報告方法の変更や場合によっては管理者の行動調査といった対策が考えられます。社内不正・犯罪調査のプロである外部調査業者のアドバイスや実際の調査を利用すれば、効率的にしっかりと対策をすることが可能です。
不安分子の排除や、社内では気づきにくい問題対策に、調査会社が行う専門的な調査は有効となります。
従業員を育成せず専門家に任せられる
社内の問題はできるだけ社内で取り扱うものですが、そのためには専門的な知識を持った従業員が必要です。
社内不正や犯罪の対処は、一般的な会社業務とはまた違います。法律を鑑みつつ、現状の対策に必要な高度な知識を持った従業員を常に育成し続けるのは簡単ではありません。
特にいくつもの支部や支店を持つ組織では、高い水準の専門家を複数名必要としますのでハードルは上がります。
そこで外部業者を利用すれば、組織内で専門家を育成する必要がなくなります。組織では基本的な調査や通報の受付を行い、それ以降を外部委託で専門家に任せることができます。もちろん、まるごと委託することも可能です。
ほかにも、調査会社を顧問として利用し、相談したり専門的な部分だけをまかなう方法もあります。調査会社などの外部業者を上手に利用することで社内のコストや負担を抑えつつ、本格的な不正・犯罪調査と予防ができます。
調査会社を利用した具体的な不正予防の方法
調査会社は組織のニーズに合わせて必要なサービスを提供しています。具体的にどんなことができるのかをみていきます。
身辺調査・行動確認
調査が必要な従業員等の身辺調査・行動確認を実施します。
具体的には、過去に同様の問題行動がなかったかどうか、過去から現在における評判などを取材する前職等調査や現在の身辺調査が挙げられます。経歴詐称、ハラスメントや横領、各種犯罪行為の対策に役立ちます。
行動確認では仕事中の行動はもちろん、勤務時間外にどこを訪れ、誰に会っているかを調査します。反社会的勢力との繋がりや交友関係・背後関係、異性関係といった不適切行動の確認、情報漏洩や横領、各種犯罪行為の対策に利用してください。
定期的な調査
外部調査は、問題が実際に発生したときの調査はもちろんですが、顧問契約によって定期的な調査を実施し、問題の予防対策にも利用されています。
社内不正・犯罪は、雑草と同じで一度キレイにすればそれで終わりではありません。継続して対策しなければ、また同じことが起こり得ます。外部調査を利用して常に目を配り続けることで、良い状態を保ってください。
具体的には、支部や支店を抜き打ちで立ち入り調査をしたり、覆面で接客態度や実際の取引数を確認するといった調査が可能です。顧問契約においては、日常の対策や相談、不正・犯罪を防ぐ組織対策の構築サポートなども実施しています。
抑止力
社内不正や犯罪は、いくつかの条件がそろって発生します。その条件のひとつが「不正や犯罪をしやすい環境」です。
目の届きにくい支部や支店はこの「不正や犯罪をしやすい環境」になりやすいといえます。そこで、組織として外部業者と共に不正や犯罪の撲滅に努めると公言することで、従業員の心の隙に柵を立てることができます。環境条件の整備に調査会社をご利用下さい。
まとめ
この記事では、目の届きにくい支部や支店、管理者の不在時間が長い事業所の社内不正・犯罪をどう防ぐかについて解説しました。
目が届きにくいということは、問題が起きやすい環境にあるということです。経営管理者は、常に意識を向けて不正や犯罪の防止に努めてください。組織内の不正・犯罪対策をしっかり行うことこそが、従業員と組織を守ることになります。
ただし、社内の不正や犯罪の扱いはとてもデリケートで、対処をまちがうと問題がこじれたり別のことに飛び火する可能性もあります。適切な対応を確認し、必要であれば調査会社など外部業者の調査を検討するのもひとつです。
どの組織にとっても社内不正・犯罪は他人事ではありません。丁寧な対応と確実な対策でよりよい職場環境を育てて組織を発展させてください。