社内で横領が起きた!証拠集めと会社の対応について解説

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社内で横領が起きてしまった場合、どのように対応をすればよいでしょうか?

会社の資産である現金や商品は社員が管理していることも多く、横領はどのような会社にも起こり得ます。そんな横領が発生した場合の証拠集めや実際の対応方法について、本記事では詳しく解説します。

会社で起こり得る横領とは

「横領」とは他人の所有物を無断で自分のものとする行為を指します。

企業においては業務の過程で、会社の所有物を社員が管理することがありますが、この際、管理をしている社員が、それらの会社の所有物を不当に占有した場合、それらの行為は「横領」になります。このように会社での業務の過程で起こることから、「業務上横領」と呼ばれることもあります。

そして、横領にはさまざまなケースがあります。ここでは会社で起こり得る横領のケースを、以下でご紹介していきます。

経理担当者が会社のお金を着服した

会社で起こり得る横領のケースのひとつが「経理担当者が会社のお金を着服する」というものです。経理担当者は会社の金銭を管理しています。特に取引先への支払いや公金の納付などでは、直接的に会社のお金を取り扱います。こういった立場から、経理担当者が会社のお金を着服する事例があります。

たとえば、本来は存在しない取引の費用を計上して自分の利益としたり、取引先への支払い額を余分に上乗せしてその余剰分を自分の利益にするといった事例です。なかには、社員への交通費や備品代を不正に支給し、その利益分を取り分けるといったように、他社員と結託をして会社のお金を横領するケースもあり、このような経理担当者による不正な着服が長年続いた結果、数十億円もの被害が生じたケースもあります。

従業員がレジからお金を盗んだ

「従業員がレジからお金を盗んだ」というケースも実際に起こり得ます。小売業やサービス業などの実店舗での運営では、従業員がレジの現金を管理します。経理担当の場合と同様に、管理をしている従業員はレジの現金に容易に手をつけることができます。

また、レジ内の現金を直接盗み出すケース以外に、不正に会計を多く計上しその利益分を着服したり、顔見知りの客に多くお釣りを渡すといった事例もあります。小売店やサービス業の場合には従業員が学生などのアルバイトであることもよくあるため、出来心からこういった横領に走ってしまうことがあります。

会社の在庫商品や備品を売却した

横領には、「会社の在庫商品や備品を売却する」というケースも想定されます。「横領」と聞くと、会社の現金に直接手を付けることを想像されるかもしれません。しかし「会社の在庫商品や備品を盗み、それらを売却することで利益を得る」というケースも横領に当たります。

会社のお金を管理できるのは経理担当などの特定部署の社員である一方で、在庫商品や備品は社員であれば誰でも手を付けられます。そのため、こちらの横領のケースは全社員に起こり得ます。さらに、直接会社のお金に手を付ける場合と比較すると、こちらのケースは発覚が困難です。

なぜなら、備品の紛失などは日常的に起こり得るためです。特にその商品や備品が日用品や消耗品であった場合、それらがなくなったとしても一般的に盗難を疑うことはあまりありません。在庫商品や備品の管理を徹底し、防犯カメラの設置を行うなど対応策をしっかりと練ることが重要になります。

横領が発覚したら

もし社内で横領の疑いが起きた場合には「本当に横領があったか」という事実確認を先に行いましょう。

疑いだけでは横領の事実があったかどうかはわかりません。だれかが嫌がらせでデマを流しているという可能性も考えられるため、必ず横領の有無を確定させることを優先します。その上で、横領の事実が確認できた場合には適切に対処をする必要があります。ここでは実際に横領が発覚したときの対応方法をご紹介します。

損害賠償請求する

横領をした社員に対しては、損害賠償請求をすることが考えられます。横領をされて失った分の損失を請求することは当然の権利です。ただし、会社での横領の場合は金額が大きくなることが多く、社員が金銭を使い切っている場合には回収が難しいことも少なくありません。弁護士などの専門家と相談をしながら、強制執行など、対応方法を検討しましょう。

懲戒処分・懲戒解雇する

業務上の横領は、会社に損害をもたらし信用を失墜させる重大な違法行為です。そのため横領を行った社員に対しては「懲戒解雇をする」というのが一般的です。

「懲戒解雇」は、懲戒処分におけるもっとも重い処分です。この懲戒解雇を行うためには「合理的な理由」と「処分に値をする重大な過失があること」が要件とされますが、横領の事実が認められれば一般的にはこれに該当するでしょう。

ただしその他にも「就業規則に懲戒処分の内容が明記されていること」弁明の機会を与えるなどの「適正な手続きをもって処分を行うこと」といった条件があるため、この点にも注意をしましょう。

社員横領の対応には確実な証拠が必要不可欠

社員の横領へ対応をするためには、確実な証拠が必要になります。損害賠償請求や懲戒解雇が認められるためには、横領の事実を証明しなければなりません。これらの横領の事実認定のためには、確実な証拠が必要不可欠です。

もし証拠が不十分であれば、横領の事実が認められるずに、損害賠償請求や懲戒処分ができない可能性があります。横領が発生した場合には、その事実を確認できるような証拠を押さえなくてはならないことを心得ておきましょう。

横領証拠の集め方

社員の横領への対応には、確実な証拠が必要不可欠です。証拠を集めるにあたっては「自社での証拠集め」と「専門家への依頼による証拠集め」の2つが想定されます。ここからは、横領証拠の集め方を詳しく見ていきます。

自社で出来ること

横領の証拠集めにあたり、自社で出来ることをご紹介します。

まず確認をしたいのは、防犯カメラなどの「横領が確認できる映像」です。特に会社の現金を直接盗み取っていた場合には、防犯カメラに犯行の映像が残っていることがあります。また、会社の取引履歴や口座などを確認して、不正な取引がないかも調査してみましょう。経理担当が横領を働いていた場合には、こういった取引履歴を辿って調査をすることによって、証拠を手に入れられることがあります。

さらに、会社の在庫商品や備品を転売している疑いがある場合には、インターネットでの検索などから同品が販売されていないかを確認しましょう。もし該当する品が見つかれば、出品者の情報などから社員が転売をしていた事実が確認でき、証拠にすることができます。

加えて「横領をした社員による自白データ」も証拠になります。話し合いの場を設け、社員が横領を認めて自白している部分を動画や音声などで記録をすれば、証拠として活用できます。ただしこれらの証拠を集めるにあたって、調査方法を誤ったり過度な調査を行ってしまうと、それらの調査自体が違法行為に当たる可能性もあります。適切な調査によって、可能な限り多くの証拠を集めるようにしましょう。

専門家に頼むべきこと

次に、横領の証拠集めにあたって専門家に頼むべきことをご紹介します。

専門家に頼むべきなのは、より徹底をした深堀りな調査です。たとえば、尾行・聞き取り・隠し撮りといった調査などが挙げられます。詳細な調査を行うことによって、対象の社員の動きを逐一追うことができ、横領に繋がるような証拠を入手できることがあります。

これらの調査を個人が行うと違法行為に該当する可能性がありますが、調査業を生業とする専門家は、法律によってこれらの調査が一部許容されています。そのため、リスクを抑えながら、事実認定に繋がる有力な証拠を入手できます。

社員が横領の事実を否定していたり、裁判沙汰に発展する場合には、より確実な証拠が必要です。証拠不十分で事実が認められないといった事態にならないように、専門家への依頼による調査がおすすめです。

横領調査・対応の専門家とは

社員の横領に対して適切に対処をするためには、横領調査・対応の専門家への依頼が確実です。

しかし、横領調査・対応の専門家とは、どのようなものが挙げられるでしょうか?ここでは証拠を集める「調査の専門家」と、集めた証拠を活用する「対応の専門家」について、それぞれご紹介します。

証拠を集める専門家・探偵

まずは「調査の専門家」についてご紹介します。

証拠を集める調査の専門家には「探偵」が挙げられます。探偵は調査全般を担う専門家で、法的にもその権限が認められています。先にも挙げたような、本来はリスクのある調査を行うこともでき、より有力な証拠を押さえることができます。

「証拠を手に入れるのが難しい場合」や「より確実な証拠が欲しいという場合」はもちろん、「横領の疑いがあるが事実の確認がとれない」という場合にも、探偵への調査依頼によって横領の事実の有無を明らかにすることができます。

集めた証拠を活用する・弁護士

調査によって有力な証拠を集めても、それをうまく使うことができなければ意味がありません。集めた証拠を活用する専門家が「弁護士」です。

横領の証拠を集めたあとには、当事者との交渉や裁判など、実際に対応を行います。これらの対応にあたっては、法的な専門知識が必要不可欠です。特に、訴訟にもつれ込む場合には、自社での対応は困難で、リスクも大きくなります。収集した証拠をもとに、確実に対応ができるように、弁護士への依頼も検討しましょう。

事例

ここまで、社員による横領やその対応方法について確認してきました。より解像度を高めてイメージがしやすいように、実際の事例を簡単にご紹介します。

※なお守秘義務に反しないよう、内容の一部に改変を加えております。

経理担当者の横領

A社では、帳簿と実際の預金残高に違いが生じることが続いており、社員による横領の疑いが考えられていました。最初は自社での調査を行いましたが、確信に至ることはできず、困ったA社は探偵への調査を依頼します。

約1ヵ月後に調査報告が届き、A社の経理担当であるBが不正会計を行うことによって、会社の金銭を横領していたという事実が発覚します。それと同時に、A社からBの取引口座へと不正送金をしていたことがわかる証拠を探偵から受け取りました。

その後、A社はBへ横領の事実を問い詰めました。Bは否定しましたが、探偵から受け取った証拠を提示すると渋々横領の事実を認めました。最終的に被害額の返還と、懲戒解雇という形でA社とBは合意をすることになりました。

在庫倉庫管理者の横領

C社では、記録をしている商品の在庫数と実際の在庫数が合わないことが続いていましたが、防犯カメラの映像などを確認しても、社員による盗難などの事実は確認できませんでした。しかしそんなときに、在庫倉庫管理者であるDが在庫商品を転売しているという情報を聞きつけます。事実を確認しようと調査をしても確認ができず、C社は探偵への調査依頼を行いました。

その結果、Dが防犯カメラの死角をついて在庫商品の盗難を行い、それらをネットオークションで転売している事実が判明します。C社は、盗難をしているDの動画データ、オークションの転売履歴などといった証拠を探偵から受け取り、これをもとにDに事実を確認すると、Dはこれを否定し、最終的に話はまとまらず裁判沙汰へと発展しました。

裁判では、探偵から受け取った横領の証拠を弁護士がうまく活用をしたことで、C社は勝訴することができました。

横領されたら~まとめ

今回は、社員による横領が発覚した場合の対応をご紹介しました。

適切に対応を行うためには、横領の事実を証明できる確実な証拠が必要不可欠で、それらの集めた証拠をうまく活用しなければなりません。自社での証拠集めが困難な場合やより確実に対応をしたい場合、探偵や弁護士など、専門家への依頼を検討してみましょう。

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