社内不正が疑われるときや、すでに発覚したとき、組織はどのように行動するべきなのでしょうか。
社内不正はできるだけ速やかに対処すべきですが、組織内での出来事ですので、対処方法を間違えば、問題が大きくなったり解決に時間がかかる可能性があります。組織としては、具体的な行動の流れと考え方を知って、しっかり準備しておくのが望ましい対策です。
こちらでは、数々の社内不正事案を手がけてきた外部調査のプロが社内不正について適切に対応するためのポイントをご紹介します。社内で起こり得る問題への備えとして、また現在お困りの方は対応策の検討として参考になさってください。
目次
社内不正は他人事ではない
社内不正はどこの組織でも起こり得るもので、他人事ではありません。
社内不正というと、マスコミで取り上げられるような大きなものを想像されることもありますが、決してそればかりとは限らないのです。
社内不正は組織の大きさや業態にかかわらず、どこでも起こり得るもので、交通費の水増し請求や備品の私物化といった一見軽微なケースから、横領、機密漏洩といった事案がそれにあたります。
従業員の行動をすべて見張り、規定で囲うのがよいとはいえません。しかし、たとえ軽微と思える不正事案でも、それが徐々に大きくなることや、すでに起きている大問題の一角である可能性について考えておくことが大切です。
社内不正は組織の存続に関わる問題であり、いつどこで起きても不思議はありません。
問題の小さな芽を見逃さない対策と、ちょっとした違和感を放置しない対処でしっかり組織を守ってください。
社内不正を疑い行動すべきタイミング
問題は早期発見早期対応が望ましいとされますが、それは社内不正問題についてもあてはまります。
常に目を光らせて、何かあったらすぐに行動できればよいのですが、それはなかなか現実的ではありません。また、何を基準に線引きして行動すべきかの判断はとても難しいのが実際です。
こちらでは、社内不正を疑い行動すべきタイミングについて具体的にみていきます。
内外からの告発があったとき
組織内または外部からの告発をきっかけに社内不正が発覚するケースは珍しくありません。
社内からの訴えや、外部から不正について指摘を受けたなら、それを明らかにするべく行動することが望まれます。
中にははっきりと告発の形を取らず、噂話や仕事を離れた席での日常会話で耳にするケースもみられます。日常会話には大切な情報が含まれている可能性が大いにありますので、与太話だと受け流さずに、注意することが大切です。
告発については、それが該当者への嫌がらせや恣意的であるなど、告発者側に問題がある可能性もゼロではありません。告発を受けた内容をそのまま鵜呑みにせず、公平に調査して対応する必要があります。
社内面談で違和感を得たとき
組織内で定期的に行う個人面談は、社内不正をみつけるきっかけになります。言動や行動から面談内で得た違和感、そして何かしらの訴えは見逃さないようにしてください。アナログではありますが、直感は軽視できません。
また、面談では社内不正の動機となり得る背景がないか、チェックすることになります。
社内不正が起きるには動機があります。それは、仕事への不満であったり、自分が正当に評価されていないと感じていることや、プライベートで経済状況に問題があるなどです。
個人面談は、これらの兆候をチェックするチャンスです。
昨今は個人情報保護に過敏な人が多いため、積極的な聞き出しは推奨できませんが、できる範囲でしっかり聞き取って、必要な情報を感じ取ることが大切です。
社内不正に関する定期的なチェック
最初にも申し上げましたが社内不正は特別な事象ではありません。どこの組織でも、そしていつでも起こり得ます。
そのようなことから、「何か」あったから行動を取るのではなく、定期的に社内不正がないかチェックすることがとても大切です。
その方法として、社内での対策を講じるほかに、恒常的に外部調査機関を使うのも有功です。問題が起きたときだけスポットで依頼するのではなく、外部調査機関を顧問に置くことで社内不正にはやく気づいて対応することができます。
普段から外部の目を通して社内環境を見守ることで、風通しの良い組織が作られます。
社内不正を疑ったときに組織がとるべき行動
社内不正を疑ったとき、組織はどう動けばよいのでしょうか。
ここでの行動が、問題の行く末と今後の組織のあり方に大きく影響しますので、慎重かつ丁寧な行動が望まれます。
より良い解決を目指して組織がとるべき行動についてみていきます。
内部調査
火のない所に煙は立たないと言うように、告発を受けたり噂を聞けば感情的にそれが事実であるように思えて、それ相応に行動してしまいがちです。しかし、内部不正の取り扱いは一従業員の進退に関わる問題ですので、状況証拠だけで判断することは望ましくありません。該当従業員に処分を下す前に、内部調査を実施して具体的で証拠能力のある証拠をみつける必要があります。
経理や物品に関する不正であれば、経理帳簿や物品管理簿の確認をすることと、疑われる不正を裏付ける証拠を集めます。また不正が情報漏洩についてであれば、該当者のパソコンデータや、メモ、行動から証拠を集めることになります。
該当者以外の従業員から事情を聞くことも必要ですが、調査の段階で関係のない従業員や該当者本人に調査していることが知られないようくれぐれも注意してください。
内部調査は、それを行う人員や部署があるなら、そこでまず対応ができます。社内で既存の専門チームを持たないのであれば、組織の形態や規模に準じて、経営者自らもしくは信頼できる責任者をおいて内部調査を行うことになります。
外部調査
社内不正問題は、内部調査と合わせて外部調査を実施するのが望ましいといえます。
内部調査を徹底的に実施するのが難しい組織では、外部調査に頼って先導してもらうことも可能です。いずれにしても、プロの外部調査員を導入して対応していきます。
外部調査が必要な理由のひとつは客観性の確保です。社外の人間が対応することで、該当者はもちろんそれ以外の従業員、そして対外的にも公平な観点からの判断であると理解が得られます。
加えて、調査の専門家の手で法的に有効な証拠が取れることも、外部調査を行う意味のひとつです。
また、パソコンの解析や該当者の行動調査など、社内では難しい専門調査も外部調査であれば対応出来ますので、より詳しく確実な証拠が得られます。
法的根拠を担保するために法律の専門家を利用するのと合わせて、外部調査の導入が有効です。
不正事実にどのように対応すべきか検討する
内部調査、外部調査を進めるのと同時に、今回の不正事案の今後の対応について検討する必要があります。
まず、問題を共有する範囲を決めて責任者と指揮命令系統をはっきりさせることで、これから先を動きやすくします。
また、問題の種類や規模によっては裁判や警察の介入を考えることになりますので、それについて組織の方向性を決めておくと判断がスムーズです。
不正問題に関わった該当従業員の処遇についても、内規や法律の解釈に沿って検討する必要が出てきます。想定できる対処を挙げて法律家と共に対応準備をしておくと安心です。
内部調査中に気をつける点
不正を疑ってからそれが事実と認定されるまでの間は、特に慎重でいなければなりません。内部調査中、結果が明らかになるまでに気をつける点についてみていきます。
不正が疑われる従業員の扱い方
不正が疑われる従業員ですが、どんなに疑わしかったとしても、はっきりとした証拠を得るまでは一般の従業員として扱わなければなりません。ただし、問題の形態によってその扱い方は異なります。
不正の事実が先にあり、加害者と疑われる従業員がいるケースでは該当従業員を自宅待機させるなどの対応が適当です。たとえば、経理の不正が既に認定されていて追加の調査を行うときの、経理担当者の扱いがこれにあたります。
不正が未確定の場合はまず調査でその事実をはっきりさせることになります。その間、加害者と疑われる従業員について、表向きは一般の従業員と同様に扱うのが適当です。このケースでは事実の確定が優先事項ですので、組織側は加害者にそれを隠蔽されることのないよう動くことになります。
いずれのケースにおいても、確定までの期間は問題そのものと、該当者について慎重に扱う必要があります。
告発者とその他従業員への対応
社内不正の告発を受けたら、告発内容の精査と合わせて告発した従業員が嫌がらせを受けたり、不遇な扱いを受けるといった不利益を被らないよう適切に対応する必要があります。
また、告発者が先行して外部団体に訴えたり、その他の従業員に噂を流したりすることのないよう対応することも大切です。
不正の告発者に対しては、組織が保護する姿勢を見せることと、不正が疑われる事実について組織として調査することを伝えて納得してもらうことが望まれます。
告発者を保護し、社内不正に適切に対応することで、不正を告発しやすくまた不正をしにくい組織作りにつながります。
社外への対応
社内不正は組織内の問題ではありますが、対外的信用に大きく影響します。事実認定が固まるまでは外部に漏れないよう注意しつつ、該当従業員が社外と関わることをできるだけ減らすと安心です。
そして、必要に応じて問題対応が完了してから社外に説明すると、よけいな詮索を避けることができます。
情報漏洩など、問題が社内に留まらない場合の社外対応は、外部調査員、法律の専門家と協議して対応を進めてください。
内部調査・外部調査で証拠を得た後の対応と注意
内部調査・外部調査で証拠が固まったなら、いよいよ本格的な問題解決に進みます。社内不正が事実認定された後の対応は大きくふたつあります。
法的処置をとるかどうか
まずひとつ、法的処置をとるかどうかの判断です。これについては、不正事案の大小ではなく、社会的事情と照らし合わせて、判断するのが適当です。また、組織内で解決した場合、今回の対応が先々で問題につながる可能性についてもよく考える必要があります。
法律の専門家や外部調査員といった、社外の意見を取り入れて判断することをおすすめします。
社内不正に関わった従業員の処分
もうひとつは、該当従業員の処分についてです。従業員の処分は本人はもちろん、ほかの従業員や組織のあり方にも影響します。
処分された従業員がその処遇に不満を持てば、一連の出来事を逆手に取って対外的に訴えることや、組織に不利益をもたらす情報漏洩を行うといったリスクがあります。
また、該当者以外の従業員が処分を適当でないと判断すれば、不満分子となって組織に悪影響を及ぼすことも考えられます。そのようなことから、加害者従業員の処分は、多角的に考えて対応することが大切です。
短期的ではなく先々を見据えて問題対応することが組織を守ることになります。
社内不正を減らすために組織としてできること
社内不正は他人事ではなく、どこでも起き得ることですが、普段から意識して不正防止に取り組むことでリスクを減らすことができます。不正につながる要因を作らないことが、予防のひとつです。
そこで、社内不正ができる環境を作らない対策が役立ちます。具体的には、社内不正に関するポスターを掲示したり、コンプライアンスについての注意喚起を定期的に行うなどが非常に有効です。
経理作業や備品のチェックをひとりに任せず、複数で行うシステムを構築しておくと組織も従業員も安心です。
また、定期的に個人面談を行うことで、社内の情報を吸い上げやすくなります。
簡単なことや当たり前のことが含まれますが、基本の対策を丁寧に実施することで社内不正が起きにくい土壌作りにつなげてください。
まとめ:社内不正を適切に処理し強い組織作りを目指す
社内不正の発覚から事実認定、そして処分と予防について一連の流れと注意点を解説しました。
「うちは大丈夫」という思いや、見て見ぬ振りは大問題に発展します。パワーのいることですが、問題の芽に気づいたらできるだけ速やかに対応してください。
できることなら社内の問題は社内で解決するのが望ましいのですが、不正問題については専門家である第三者の目が役立ちます。適切に、そして迅速に問題解決するために外部調査機関の利用もご検討ください。
社内不正を適切に解決して、問題が起こらない土壌を作ることで強い組織が作られます。組織と従業員のために、こちらの記事をご活用いただけましたら幸いです。