企業調査の依頼~調査を行う探偵から情報漏えいする危険性は?

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「社内で横領が行われているのでは」「取引先が反社会的勢力でないか」などを明らかにするため探偵に調査を依頼したい。

けれども「調査のために提供した情報が漏えいしないか」「情報漏えいを防ぐためにどのような対策をとっているのか」など不安を抱える方もいらっしゃるでしょう。

実際に情報漏えいの事故件数は年々増え続けています。

東京商工リサーチ社の調査によると、「調査を開始した2012年以降の11年間で、社数と事故件数は2年連続で最多を更新した」と報告されています。

特にはじめて調査を依頼する探偵事務所には、心配は一層強くなるでしょう。

そこでこの記事では

  • 探偵事務所に守秘義務があるのか
  • 情報保持のためにとっている対策
  • 情報漏えいの心配がない探偵事務所の選び方

などを解説します。調査依頼を検討している会社経営者、担当者の方に参考になれば幸いです。

ポイント
  • 探偵事務所には法律で守秘義務が課せられている
  • 探偵事務所は秘密保持のために様々な対策を講じている
  • NDAを締結できる探偵事務所は安心できる

探偵事務所には守秘義務が課せられている

探偵事務所には守秘義務が課せられています。

守秘義務とは職務の特性上、秘密と個人情報の保持が必要とされる人物が対象です。

このような人物に対して「職務上知った秘密を守る」、「個人情報を開示しない」など法律の規定に基づいて課せられた義務をいいます。

(1)守秘義務の内容

探偵の調査は、社員の素行調査や相手先企業の調査など個人のプライベートや会社の秘密情報を扱う機会が多く、情報漏えいは絶対にあってはなりません。

そこで探偵業の適正化を図るために制定された探偵業法の第10条で、探偵事務所の秘密保持を定めているところです。

この中で探偵事務所は「正当な理由」なく「業務上知りえた情報」を漏らしてはならないこと、業務で作成した報告書や資料などについて不正な利用を防止する措置を取らなければならないことが明記されています。(探偵業法第10条)

このうち「正当な理由」とは、警察や裁判所から法律に基づいて情報開示を求められた場合をいいます。

また「業務上知りえた情報」とは、依頼人から提供を受けた情報だけでなく、尾行や張り込みなど調査の過程で得た情報も含まれます。

調査のあらゆる過程で得た秘密の全てが守秘義務の対象となるのです。

(2)守秘義務が課せられているのは探偵だけではない

守秘義務は、調査を行う探偵本人に限られません。

事務員やアシスタント、アルバイトなど事務所に勤務する全ての従業員が対象です。

このため事務所全員で秘密保持に対する意識を高めていく必要があります。

(3)探偵を辞めたあとも守秘義務は継続する

探偵は仕事を辞めた後でも、業務で得た情報を明らかにすることはできません。

いわば情報は「墓場までもっていく」ということになります。

情報漏えいしてしまったら

もし探偵事務所が守秘義務に反して業務上知りえた秘密を不正に漏らした場合、行政上、刑事上、民事上の処分・処罰の対象になります。

具体的な内容は以下のとおりです。

(1)行政処分

行政処分とは、法律違反をした者に対し管轄する行政機関が行う処分です。

探偵事務所の場合、都道府県の公安委員会が処分を行います。

課される処分はその程度によって次の3つに分けられます。

指示処分

指示処分は、違反が認められた探偵事務所に必要な処分をとるように指示する処分です。

もっとも軽い処分になります。

営業停止命令

違反の程度が重い場合や既に出された指示処分に違反した場合の処分です。

6カ月以内の期限を決めて業務の全部または一部の停止を命じます。

営業廃止命令

営業停止命令に違反して探偵業を営んでいる場合に営業の廃止を命じる処分です。

探偵業の資格を剥奪され一切営業ができません。

いわば最も重い行政処分となります。

(2)刑事罰

情報漏えいしたからといって、直ちに刑事罰が科されるわけではありませんが、行政処分を受けたにもかかわらず、処分に違反した場合や特に重大な違反の場合には刑事罰が科せられる場合があります。

指示処分に違反した場合

6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金

営業停止処分に違反した場合

1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金

営業廃止命令に違反した場合

1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金

(3)損害賠償

探偵事務所が守秘義務に反して秘密を漏えいしたために依頼者や関係者が被害を被った場合、被害者は損害賠償を請求できます。

秘密保持のために探偵事務所が取り組んでいる具体的な対策

ほとんどの探偵事務所は秘密保持のために必要な対策を講じています。

具体的な対策は以下のとおりです。

(1)従業員との秘密保持等誓約書を交わす

秘密保持等誓約書とは、従業員に業務上知りえた秘密をもらさないことを約束させる書類です。

これにより従業員が情報漏えいや不正利用など誓約書の事項に違反した場合、懲戒処分や損害賠償の請求ができますので情報漏えいなどの抑止力として働きます。

(2)従業員への教育

探偵事務所は使用人その他従業員に対し業務を適正に実施させるため、「必要な教育」を行わなければなりません。(探偵業法第11条)

このうち「必要な教育」とは、探偵業法や個人情報保護法などの法令の知識習得や、業務に関する資料や情報の適正な取り扱いに関する教育などです。

前項でもお伝えしたように、探偵事務所全員に守秘義務が課せられています。

秘密保持の意識を高めて情報漏えいを防ぐために教育は欠かせません。

(3)調査関係資料の厳重な保管

尾行や張り込み、聞き込みなどで集めた資料や情報は鍵のかかる保管庫に入れ、厳重に補完します。

(4)業務で使うパソコンのセキュリティー対策

仕事のあらゆる場面でパソコンを使用する現在、セキュリティー対策は今や不可欠な対策となっています。

東京商工リサーチ社の調査によると、”2022年の情報漏えい・紛失事故の165件のうち、原因別では、「ウイルス感染・不正アクセス」の91件(構成比55.1%)が最多で、半数以上を占めた”そうです。

情報漏えいを防ぐ対策として、業務用のパソコンや外付けハードディスクなど外部メディアの持ち出しを禁止する、パスワードや指紋・顔などの生体認証を用いてログインできる人間を制限する、セキュリティソフトを導入してウィルス感染のリスクを減らすなどがあげられます。

(5)調査終了後の資料の廃棄を徹底する

調査が終了した資料は保管する期限を決め、期限が経過したら廃棄処分します。

紙であればシュレッダーで裁断して再現できないようにし、デジタルデータはパソコンに残らないようにデータを抹消できるソフトを使用して行います。

なお、処分の期限は契約時に定めるのが一般的です。

情報漏えいの心配がない探偵事務所を選ぶためには

法律により守秘義務が課せられていても、全ての探偵事務所で情報漏えいのリスクが完全に払しょくされるわけではありません。

そこで情報保持に真剣に取り組み、漏えいのリスクが少ない探偵事務所を選ぶにはどう判断すればいいのでしょうか。

もっとも簡単で確実な方法は探偵事務所とNDA(秘密保持契約)を締結できるかで判断することです。

NDAの締結をうたっている探偵事務所は安心

NDA(秘密保持契約)とは、依頼者との間でやりとりした秘密情報に関して、依頼者の同意なく情報の開示、目的外使用を禁止する契約をいいます。

NDAに関しては経済産業省も有効性を認めているところです。

同省が公表している「秘密情報の保護ハンドブック〜企業価値向上に向けて〜」では、NDAの内容に契約違反時の対応を明示することで取引先による情報漏えいをけん制する効果がある、といった旨の記述があります。

情報保持に効果が認められるNDAですが、探偵事務所の中にはNDA締結をホームページなどで自らうたっているところもあります。

情報漏えいへの対策がしっかりとられており秘密保持に関して万全の自信がある証拠で、特に安心して依頼できる事務所といえるでしょう。

(1)NDA締結のメリット

NDAを締結すると次のようなメリットが考えられます。

情報漏えいに対する意識を高める効果がある

契約を結んでおくことで探偵事務所には責任が生じ、否が応でも情報漏えいに対して意識を高める必要が生じます。

契約違反があった場合、損害賠償を請求できる

NDAを締結していれば、探偵事務所の責めに帰す事由で情報漏えいが起きた場合、依頼者は探偵事務所に損害賠償を請求できます。

探偵事務所側に損害賠償を請求できるようにしておけば、依頼者にとっては情報漏えいのリスクヘッジとしても有効です。

その他の判断するためのポイント

NDAの締結以外にも判断するポイントがあります。

確認や説明がメインになりますが、確認がとれない、説明がわかりにくいなど不安を感じた場合は避けたほうが無難です。

(1)探偵業届出証明書があるか

依頼の前には探偵業届出証明書があるかを確認しましょう。

探偵業を開始するときは、営業所を管轄する公安委員会に届出書を提出しなければなりません。

届出が受理されると「探偵業届出証明書」が交付されます。

この証明書は営業所の見やすい所に掲示しなければなりませんので、営業所を訪れた時は確認しましょう。

届出書を提出せず、いわゆるモグリで営業している者が秘密保持に気を配っているとは考えられません。

(2)行政処分を受けていないか確認する

依頼する探偵事務所が行政処分を受けていないかを確認しましょう。

詳細は各都道府県警察のホームページで確認できます。

サイトでは探偵事務所が情報漏えいなど探偵業法に違反し、行政処分を受けるとその事務所名や処分内容、理由などが公表されます。

公表期間は、処分の日から3年間です。

処分を受けた事務所は、情報漏えいにとどまらず順法意識や従業員教育が足りていないと想定されますので別の事務所を探した方がいいでしょう。

(3)重要事項説明書の確認

重要事項説明書に記載されている秘密保持に関する項目を確認しましょう。

重要事項説明書とは、依頼者に対して探偵事務所が交付する契約上重要な事項を記した書面です。

探偵事務所はこの説明書を契約締結前に交付しなければなりません。(探偵業法第8条第1項)

内容は探偵業法に規定されていますが、情報の保持に関して以下の項目を記載しなければなりません。

  • 探偵業務を行うに当たっては、個人情報の保護に関する法律その他の法令を遵守するものであること
  • 探偵業務に関して作成し、又は取得した資料の処分に関する事項

もし記載項目に疑問点があれば迷わず担当者に質問しましょう。

(4)契約時、守秘義務に関して口頭での説明があるか

探偵事務所から契約時に情報保持に関する説明があるかを確認してください。

例えばどのような情報が守秘義務の対象となるのか、情報漏えいしたときにはどのような対応をとるのか、提供を受けた情報をどのように扱うかなどを確認します。

秘密保持に真剣に取り組んでいる事務所であればしっかりと説明できますので、口頭での説明を受けましょう。

(5)調査関係書類の保管や廃棄方法を確認する

重要事項説明書で資料の処分についての記述はありますが、書面上だけでなく、具体的な保管方法や処分方法を口頭で確認しておきましょう。

保管や廃棄がいい加減であれば、情報漏えいのリスクは高まります。

秘密保持にしっかり取り組んでいる事務所であれば問題なく説明できるでしょう。

まとめ

ここまで探偵事務所の守秘義務の内容や、秘密保持のための具体的な対策、情報漏えいのリスクが少ない探偵事務所の選び方などを説明しました。

信頼できる探偵事務所の判断基準は、ホームページなどでNDAの締結をうたっている、依頼者からの問い合わせにしっかり対応できるなどがあげられます。

今回の記事で、情報漏えいを心配せずに依頼できる探偵事務所を選ぶ際の参考になれば幸いです。

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