企業間で取引を行う場合、相手企業の信用性を確認しておくことは非常に重要です。
取引をする相手企業の信用度を調べることによって、あらかじめリスクを回避することができます。
しかし企業調査には多くの方法があります。実際にどのような方法で調査を行えばよいか、わからない方も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、企業調査に必要な4つの方法を詳しく解説していきます。
目次
企業に対する信用調査の重要性
「信用調査」とは、取引をするにあたり相手企業の情報を調べて、信用性を確認することです。
支払能力や財政状況を調査することによって、信用性の確認を行います。もし信用調査を行わずに取引を行ってしまうと、トラブルが発生する可能性があります。
たとえば、財政状況の良くない企業と取引を行った結果、貸し倒れとなってしまった場合には、自社にとって大きな損失となります。当然、取引の規模は大きければ大きいほど、損失も大きくなります。
そこで、あらかじめ信用調査を行うことによって、支払遅延や貸倒れといったリスクを回避することができます。自社の運営をするにあたり、相手企業に対する信用調査は非常に重要です。
実際に信用調査を行う場合には、さまざまな方法があります。この先では、信用調査の方法をそれぞれご紹介していきます。
内部調査
ひとつめの信用調査の方法が「内部調査」です。
「内部調査」とは、すでに社内にあるデータを基に行う調査方法です。すでに取引をしている、または過去に取引をしていた企業の場合、社内に取引をした際のデータが蓄積されています。
こういった情報を収集することによって、相手企業の調査を行うのがこの方法です。
担当者からの情報を集める
まず確認をしたいのは、その企業との取引を担っていた担当者からの情報です。
担当者は直接取引を行っているため、相手企業の直接的な情報を得ることができます。取引を担当していなければ、得られるのはデータ上からの情報のみです。
たとえば、「相手企業の社内の雰囲気はどのようなものであるか」、「取引において何かトラブルはなかったか」、「相手企業が今抱えている課題はどのようなものか」などといった情報は、直接取引を行っていた担当者であるからこそ、詳細に得ることのできる情報です。
担当部署からの情報を集める
担当者個人に加えて、担当部署からの情報を集めることも大切です。
担当者は相手企業との取引を行うにあたり、現場の声や状況などの直接的な情報を所有しています。それに対して、担当部署は相手企業に関しての、データ上から得られるような基本情報を所有しています。
たとえば、取引を始めるにあたって収集をした相手企業の登記情報や財務状況などがこれらに当たります。担当部署と担当者、双方から情報を収集することで、より効率的に調査を行うことができます。
直接調査
次に挙げられる方法が「直接調査」です。
直接調査はその名の通り、「相手企業から直接情報を得る」という調査方法のことを指します。直接調査のなかにも、いくつかの方法があります。それぞれ確認していきましょう。
相手企業を訪ねる
直接調査のひとつの方法が、相手企業を訪ねる「訪問調査」です。
訪問をして直接話を伺うことで、文面からは得ることのできない、より詳細な情報を聴取することができます。また、社内の雰囲気や仕事ぶりなど、実際の現場の状況も確認できます。
特に新規取引の場合には、信用性を確認するために、一度相手企業へ足を運ぶのが推奨されます。
相手企業に電話する
続いて考えられる方法が「電話調査」です。
こちらも訪問調査同様に、文面などよりも詳しい情報を得ることができます。訪問調査に比べて手軽に行えるのがメリットですが、現場のリアルな情報を得ることはできません。
しかし遠方で訪問が困難な場合や継続取引の場合には、電話調査がおすすめです。また、近年では電話での調査に加えて、ZoomやSlack、Google Meetなどといったツールを用いたWeb会議での商談も主流になっています。
Web会議であれば、相手の表情を確認しながら商談を行うことができるため、電話よりも重宝されている方法です。
相手企業にメール・FAXする
メール・FAXを活用して調査を行う「メール・FAX調査」もあります。
取引内容等の確認はもちろん、相手企業のパンフレットや財務諸表の送付を依頼することによって情報を収集することができます。
ただし、得られる情報量は少なく、やりとりのできる範囲も限られてしまうため、新規取引の場合には、やはり訪問調査や電話調査がおすすめです。
メール・FAX調査は、継続取引などの定期的な調査に用いられることが一般的です。
外部調査
内部調査や直接調査は、自社が直接的に情報を収集する調査方法でした。
それに対して「外部調査」とは、官公庁やインターネットなどといった外部からの情報を得る調査方法です。自社が得ることのできる情報には限りがあります。
より詳しい情報を得るためには、こういった外部からの情報を収集するというのもひとつの手段です。
官公庁調査
外部調査のひとつが「官公庁調査」です。
「官公庁調査」とは、官公庁に登録されている内容、主には登記簿から情報を取得する方法です。登記簿は法務局が管理しており、全国の法務局にて、誰でも公布請求をすることができます。
具体的には、登記簿謄本を取得し、そこに記載されている情報から相手企業の調査を行うというのが一般的な方法です。
商業登記簿を調べる
官公庁調査にあたり、まず行うべきなのは「商業登記簿」の調査です。
「商業登記」は、会社の基本情報を登録し公示を行う制度です。会社の設立にあたり登記が義務づけられています。
商業登記には、「商号(社名)」、「本店所在地」、「設立日」、「事業目的」、「資本金」、「役員」などの情報が記載されています。そのため、商業登記簿を調べることによって、相手企業の基本情報を知ることができ、信用調査の情報源にすることができます。
たとえば、資本金を調べることによって、相手の企業規模を推測することができます。当然、資本金が極端に少ない企業と規模の大きい取引を行うことはリスクになります。
また、「事業目的」からは相手の大まかな事業内容を知ることができますし、「役員」に記載の人物を調査することによって、過去の不祥事の有無などを確認することもできます。
さらに、登記証明書のひとつである「履歴事項証明書」からは、過去の登記情報の変更履歴を閲覧することができます。
たとえば、相手企業の登記情報を調べてみて、商号や本店所在地、役員などが頻繁に変更されている履歴がある場合には注意が必要です。実際に不祥事が起きた際に、事実隠蔽をするために、こういった登記情報を頻繁に変更する会社があるためです。
ここまで見てきたように、商業登記簿からは多くの情報を得ることができます。
不動産登記簿を調べる
「不動産登記」は、土地や建物の基本情報を登録し、公示を行う制度です。
「不動産の所在地」、「面積」、「所有者」、「権利関係」といった、不動産に関する基本情報が記載されています。相手企業が所有する不動産の登記簿を調べることによって、大まかな財務状況が確認できることがあります。
相手企業が所有者の不動産については、所在地と面積から大体の価額を調べることができ、資産額を推定することができます。一方で、その不動産が債権者に差し押さえられている場合には、その旨が登記簿に記載されます。
もし、「差押え」の記載がある場合には、相手企業の財務状況は良くない可能性が高いです。また、不動産に抵当権が設定されている場合には、借入先や借入額が記載されるため、相手企業がどこからどれくらいの融資を受けているかといった情報も得ることができます。
抵抗権について、特に注意すべきなのは、「抵当権者が消費者金融である場合」です。抵当権者が消費者金融である場合は、銀行からの融資だけでは額が足りなかったり、何らかの問題があり銀行から融資を受けられない状況にあることがほとんどです。
そのため、相手企業は資金繰りが苦しい状況にある可能性が高いといえます。このように、相手企業の不動産登記簿を調査することによって、大まかな財務状況を調べることができます。
検索調査
外部調査には、「検索調査」という方法もあります。インターネットなどを活用することによって、相手企業の情報収集をするのがこの方法です。
インターネットで調べる
まずは、インターネットで相手企業のWebサイトを確認してみましょう。
企業のWebサイトには、「代表者名」、「住所」、「連絡先」といった概要から、「経営理念」や「実績」、「サービス内容」など多くの情報が記載されています。
さらに、「決算公告」や「IR情報」を確認できれば、より詳細な情報を得ることができます。手間や時間をかけず手軽に調査ができるため、まずはインターネットで調査を行ってみましょう。
Webサイトがない場合の検索方法
インターネットで相手企業のWebサイトを調べる方法をご紹介しましたが、会社規模が小さい場合やWebでの集客を行っていない企業の場合には、Webサイトがないケースもあります。
もしWebサイトがない場合でも、相手の「企業名」や「代表者名」で検索をかけることによって、情報を得られることがあります。
また、インターネット以外にも、「新聞のデータベースサービス」などを活用することによって、相手企業の過去の情報を得ることができるかもしれません。
特に、相手企業が過去に不祥事を起こしていた場合には、インターネットや新聞などから情報を得られる可能性も高くなります。
側面調査(裏付け調査)
「側面調査(裏付け調査)」も、外部調査の手法のひとつです。
「側面調査」とは、相手企業の取引先や同業者から情報を収集する方法です。自社で得た情報の信憑性を確認する目的で行われることが多いことから、「裏付け調査」と呼ばれることもあります。
実際にその企業と取引を行っている企業であれば、相手企業の現場状況など、よりリアルな情報を聞き出すことができます。また、同業者から話を聞くことによって、業界内での相手企業の評判や実績などの情報を得ることができるかもしれません。
ただし、これらの評判などは正確な情報でないことも考えられるため、それだけで判断をせずに、より詳細な調査を行うのが大切です。
依頼調査
ここまでご紹介をしたのは、自社が率先して調査を行う方法でした。
しかし、自社で調査を行うためには、多くの時間と人手を要しますし、調査に関するノウハウがない場合、十分に情報を得られない可能性があります。そこで挙げられる方法が、専門機関へ調査を委託する「依頼調査」です。
費用こそかかるものの、専門機関による調査であるため、より信憑性の高い情報を得ることができます。
信用調査会社とは
企業調査を依頼する場合の主な依頼先は「信用調査会社」です。
「信用調査会社」とは、企業の財務状況や経営状況を調査することによって、相手の信用度を確認する会社のことを指します。特に、対象企業の〝信用を調査する〟専門機関であるという点が特徴です。
その他に考えられる調査機関としては「探偵」が挙げられます。信用調査会社が〝企業の信用を調査する〟専門機関であるのに対して、探偵は調査業全般を幅広く取り扱います。
また、調査手法も探偵と信用調査会社では異なります。信用調査会社は、先にも挙げたような内部調査、直接調査、外部調査などといった手法を用いて、表立った調査を行います。
一方で、探偵も表立った調査を行うこともありますが、基本的には尾行や聞き込みなどの手法を用いて、秘密裏での調査を行います。
そのため、「信用調査会社から得た情報をさらに深堀りしたい」、「より確実に情報の裏付けをしたい」という場合には、探偵への依頼がおすすめです。
信用調査会社に依頼するメリット
信用調査会社が「企業の信用を調査する専門機関」であることを確認できたところで、実際に調査を依頼するメリットをご紹介します。
始めに挙げられるメリットは、「迅速に調査結果を得ることができる」という点です。
自社で調査を行う場合には、専門のノウハウがない中でさまざまな角度から調査を行わなければならず、結果的に膨大な時間を要することが想定されます。調査に割くことのできる人員に限りが生じてしまうことも、時間を要する原因です。
一方で、信用調査会社は企業調査を専門としているため、一般企業が自社で調査を行う場合と比較して、時間をかけずに調査を完了させることができます。
大手の調査会社では企業情報をデータベース化しており、こういった情報を活用して調査を行うことができるというのも、迅速に調査結果が得られる理由です。
さらに、「より確実な情報を多く入手できる」という点も大きなメリットです。自社での調査で得られる情報には、確度の低いものもあります。
たとえば、検索による調査方法をご紹介しましたが、インターネットからの情報であれば、信憑性は保証できません。また、調査方法や情報網も限定されてしまうため、得られる情報の数にも限りがあります。
しかし、企業調査を専門とする信用調査会社の場合には、より信憑性の高い情報を、独自の調査方法と情報網から、数多く収集することができます。
このように、信用調査会社に依頼をするメリットは多くあります。
信用調査の相場
信用調査会社への依頼には多くのメリットがあります。
しかし、その一方で気にしなくてはならないのが、費用面です。実際に信用調査にかかる費用はケースバイケースですが、「1社につき約15,000円〜25,000円」が相場となります。
特に、調査対象企業の情報が、信用調査会社のデータバンク内にすでにある場合には、費用も抑えられますし、数日程度で結果が得られることもあります。
反対に、データバンクに情報のない企業であれば、新規調査が必要となり、費用も所要日数も増加します。
それぞれのケースによって金額は変動するため、上記の金額を目安に想定しておいた上で見積もりを行い、自社の予算と照らし合わせながら依頼を検討するのがおすすめです。
信用調査会社の選び方
続いて、信用調査会社の選び方についてご紹介します。
まず押さえておくべきなのは、信用調査会社には「帝国データバンク」と「東京商工リサーチ」の大手2社があるという点です。この2社のみで、業界全体の約90%をシェアしています。
圧倒的なシェア率から信頼度は非常に高く、多くの企業が信用調査を行う際にはこの2社を利用しています。
また、この他にも信用調査会社は数多くありますが、いずれの会社を選択する場合であっても、まずは一度見積もりをとってみましょう。
たとえば、A社のデータベースに対象企業の情報が存在している一方で、B社のデータベースに情報がない場合には新規調査が必要なため、B社の方が費用は高くなります。
保有する情報はそれぞれの会社によって異なるため、各社で見積もりを行った上で、もっとも自社の予算や求める条件に合致する調査会社を選択するのが大切です。
依頼調査で経営状況の悪化が判明した事例
ここでは、企業調査で相手先の経営状況の悪化が判明した事例を紹介します。※なお守秘義務に反しないよう、内容の一部に改変を加えております。
依頼者 | 部品製造A社 |
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対象者 | 販売メーカーB社 |
依頼内容 | 支払い遅延が生じたB社の信用調査 |
調査内容 | 信用調査会社のデータベース |
調査期間 | 7日間 |
A社はこれまで長年、B社と取引を行っていました。
しかし、これまでは通常通り支払われていた代金が、遅延するというトラブルが生じていました。
この段階では、遅れはするものの支払いはされたのですが、過去にない出来事に不安を感じたA社は、B社の企業調査を信用調査会社に依頼しました。
幸いにも、信用調査会社のデータバンクにB社の情報が保有されていたため、費用も抑えられ、数日後には結果が出ました。
すると、B社は昨年から経営難に陥っており、経営状況は悪化の一途をたどっていることが判明します。
長年取引を続けてきたものの、支払い遅延も生じていることから、今後の貸倒れのリスクを回避するために、A社はB社との取引を打ち切ることとなりました。
まとめ
今回は「企業調査に必要な4つの方法」を解説しました。
後々のリスクを回避するために、企業に対する信用調査は非常に重要です。
実際に調査を行う方法には多くのものがありますが、大切なのは「求める情報や予算などの条件を明確にした上で自社にもっとも適した調査方法を選択すること」です。
それぞれの調査方法の特徴を知っておいた上で、最善の方法を選択しましょう。