会社内での不正を知ってしまった場合には、どのように対応をするべきでしょうか?不正をしている相手に対して直接注意を促す方もいますが、なかには内部告発を考える方もるのではないでしょうか?しかし内部告発にはメリットと同時にデメリットも存在します。
本記事では、内部告発の概要をご紹介した上で、リスクを回避する方法や有効な制度についてご紹介します。
目次
内部告発とは
「内部告発」とは、企業内部で行われている不正や悪事を外部に通報することで、その事実を周知させる行為です。
会社で勤務をするにあたり、自社の役員や幹部、その他の社員などが法律に反するような不正を行っていることを知ってしまう場合があります。このときに企業内部の窓口、行政機関、報道機関・マスコミなどへ通報を行うことによって、不正の事実を外部に周知させるのが「内部告発」です。
内部告発の目的は「公益のため」とされています。内部告発をすることで不正に対して注意喚起・改善・防止を促すことができ、結果的に社会全体の利益、すなわち公益につながります。具体的な不正の事例には、不法な金銭授受である「賄賂や横領」、信用にかかわる「情報漏洩」、データ改ざんによる「不正会計」、労働基準法に反する「劣悪な労働環境」、セクハラやパワハラなどの「ハラスメント行為」など、さまざまなものが考えられます。
企業の不祥事が取り沙汰されることはよくありますが、このような不正の発覚は、内部告発が発端であるというケースが多くあります。
内部告発の方法
内部告発がどのようなものであるかをご紹介しました。しかし、内部告発は日常的に経験をするものではありません。実際に決心をしても、具体的な方法がわからないことが想定されます。内部告発をするにあたって、重要となるのはその告発先です。ここでは考えられる告発先をそれぞれご紹介した上で、内部告発の方法を確認していきます。
まずは、もっとも身近な告発先として「社内の内部告発用窓口」があります。2020年6月に『公益通報者保護法改正』が行われ、この改正によって労働者が300人を超える企業では、内部通報体制の整備が義務化されました。また、労働者が300人以下の企業に対しても、内部通報体制の整備について努力義務が課されています。これに伴い、整備の一環として会社内部に内部告発用窓口の設置が行われる企業が増加しました。
社内に告発用の窓口が設置されていれば、外部への場合と比較をして、気軽に告発を行うことができます。社内に内部告発用窓口が設置されているかをまずは確認してみましょう。
行政機関
社内に告発用窓口が設置されていない場合や何らかの理由で窓口を利用できない場合には、外部へと告発を行うことになります。そこで挙げられるのが、行政機関へ告発をする方法です。具体的な通報先には、「消費者庁」、「厚生労働省本省」、「労働基準監督署」などがあります。
実際の具体的な通報先は事例によって異なるため、消費者庁のホームページからそれぞれの告発内容に適する行政機関の検索を行うことができます。また、実際に消費者庁へと問い合わせを行うことによって、告発先を特定することも可能です。
これらの行政機関は、告発者からの相談も受け付けています。不明な点や具体的な方法等について、まずは一度、問い合わせによって相談をしてみるというのも検討してみましょう。
報道機関・マスコミ
続いて考えられる方法が「報道機関・マスコミに告発をする」という方法です。報道機関・マスコミの報道は社会への拡散性が高く、不正の事実を世間に公表することができます。
ただし、報道機関・マスコミへの告発にはリスクもあります。そもそもマスコミは情報の信憑性を重要視するため、確実な証拠がなければ調査・報道を行ってはくれません。また、不正が確実なものであったとしても、社会的な影響が大きくなく話題に上りにくいと判断をされれば、取り沙汰してもらえない可能性があります。
この点については、行政機関と比較をしてマスコミはあくまで私的な営利団体であることが理由です。さらに万が一、告発内容が事実ではないことが発覚してしまった場合には、報道をなされたことによる虚偽告訴罪や名誉毀損罪といった罪に問われる可能性があります。
こういったリスクが生じるため、報道機関・マスコミへの通報は会社内部に告発用窓口がなく、行政にも取り合ってもらえない場合の最終手段として利用をするのが一般的です。
内部告発のメリット
自社で行われている不正の事実を外部に周知させる内部告発ですが、これには一体どのような意味があるのでしょうか。内部告発をすることには、それぞれメリットとデメリットがあります。まずは、内部告発のメリットについて確認していきます。
組織の透明性が保たれ信頼度が上がる
内部告発のメリットのひとつめが、「組織の透明性が保たれ信頼度が上がる」という点です。
社内での不正を放置してしまうと、徐々に組織としての透明性が失われていきます。透明性が失われてしまうと、内部や外部から疑念の目を向けられたり不満が蓄積したりと、組織としての信頼度がなくなってしまいます。
不正を見逃さずに追及することは、結果的に組織の信頼度向上に繋がります。企業において、社会的信用性や信頼度を向上させ維持させることは非常に重要です。信頼度が上がるという点は内部告発のメリットのひとつです。
社内の不正がなくなり風通しが良くなる
次に考えられるメリットが「社内の不正がなくなり風通しが良くなる」という点です。
社内で不正が発生した際に、それを追及せず放置していると、問題の指摘をする文化が失われ風通しが悪くなります。反対に、社内に不正がなければ、弊害はなくなり意見を主張したり問題指摘をすることができる風通しの良い環境になります。誰もが意見や提案、問題指摘をできる風通しの良い環境をつくることは、結果的に企業の発展につながります。不正を放置せずに内部告発をすることは、最終的に企業の発展にまで繋がる重要な行動になります。
大きな不祥事を防ぎリスクを回避できる
「大きな不祥事を防ぎリスクを回避できる」というのも内部告発のメリットのひとつです。
社内の不正は放置していると拡大する可能性があります。たとえば、はじめは少数が始めた不正であっても、それについて指摘がなされなければ不正を行う習慣が事業所全体についてしまい、他の社員も不正を行うようになるかもしれません。また、はじめは小さな不正であっても、放置されていればより大きな不正を犯すようになるかもしれません。
このように不正は放置されれば次第に拡大する傾向があるため、やがては大きな不祥事に発展する可能性があります。当然このような不祥事が世間に周知されれば、会社は社会的信用を失い大きな痛手を負い、最悪の場合には経営が傾くケースも想定されます。
小さなことからでも、不正を告発することによって、大きな不祥事を防ぎ、リスクを回避することができます。
内部告発のデメリット
前項では内部告発のメリットを確認しました。内部告発をすることで信頼性を担保したりリスクを回避したりと、企業の組織力や信頼性をより強固にすることができます。しかし、こういった多くのメリットがある一方で、内部告発にはデメリットもあります。以下でそれぞれご紹介します。
人間関係が悪くなる
ひとつめのデメリットが「人間関係が悪くなる可能性がある」ということです。
不正をしていた本人からすれば、そのことを告発されるのは当然良い気分ではありません。特に日頃懇意にしていた同僚であれば、仲が良かった分「裏切られた」と感じてしまうでしょう。そのことから、不正をしていた本人とは関係が悪化してしまうかもしれません。場合によっては、不正を告発されたことの腹いせに他の同僚にも悪評を広めたりと、周囲を巻き込んで嫌がらせをされてしまい、告発をした本人が孤立してしまうという可能性もゼロではありません。
もちろん、このように人間関係が悪化しても、責任があるのは不正をしていた側で告発をした側は咎められるべきではありません。しかし、実際にこういった問題が生じる可能性はあるということはあらかじめ踏まえておきましょう。
報復されるリスクがある
「報復されるリスクがある」というのも、デメリットのひとつとして挙げられます。
先にも挙げたように、不正を告発された側は告発をした人のことを良く思いません。なかには、その後の関係悪化だけにはとどまらず恨みを買ってしまうこともあります。特に、告発によって重大な処分を下された場合にはその可能性はより高まります。
恨みを買ってしまうと報復をされるリスクが生じます。たとえば根も葉もない噂を流されたり、覚えのないミスをねつ造されて自分のせいにされたり、私物を盗まれたり、仲間はずれにされていじめのような扱いを受けたりといった報復をされるかもしれません。
また、不正が大きなもので解雇をされてしまった場合には、脅迫やストーキング、暴力行為などの極端な報復行為を受けるおそれもあります。当然こういった報復行為はそれ自体が不当なものであるため、それぞれ対処をすることはできます。しかし告発をすることによって、こういったリスクが生じるということも頭の片隅に置いておかなくてはなりません。
解雇される可能性がある
大前提として、内部告発は事実に基づく正しい内容によって正当に行われなければなりません。もし、その内部告発が正当でない場合には、懲戒処分の対象となり最悪の場合は解雇をされ、損害賠償請求をされるおそれがあります。なぜなら、内部告発は企業が保有する情報を外部へ流出させる行為で、本来であればこの行為は「情報漏洩」に該当し「秘密保持義務」に反するためです。
また、これらの内部情報を外部に流出させ企業が著しく損害を被った場合には、「誹謗中傷行為」とみなされる可能性もあります。これらの行為が認められれば、労働契約違反になる可能性が高く、契約に基づいて懲戒処分によって解雇が可能になります。
ただし、これらはあくまで「本来であれば」です。内部告発は企業内部の不正を周知させることによって、公益を保護することが目的です。告発をした内容が認められ、不正が事実であると認定されれば、告発者は保護され企業が懲戒処分を下すことはできません。内部告発は正当に行われなければ、解雇される可能性があるという点を押さえておきましょう。
公益通報者保護制度とは
自身や他者への被害防止のために企業内部で不正を知った場合の内部告発は重要です。しかし、なかには企業内部での不正を知っても告発をせずに黙認するケースがあります。その理由には、「内部告発をしたことによって会社から不利益な取り扱いを受けるかもしれない」という懸念が挙げられます。
ただし、こういった懸念があると不正の黙認が横行してしまいます。これらに対応をするために設けられている制度が「公益通報者保護制度」です。
「公益通報者保護制度」とは、適切に企業内部の不正の通報を受けた際に、通報者が不利益な取り扱いを受けないように保護をする制度で、『公益通報者保護法』という法令を土台にしています。この制度があることによって、告発者が不利益を被ることを防ぎ、不正の通報に足止めがかかるケースが少なくなります。
このように有用な公益通報者保護制度ですが、すべての内部告発を対象とするわけではなく適用には一定の条件が定められています。ここからは、公益通報者保護制度の概要を詳しく確認していきます。
保護の対象者
まずは公益通報者保護制度において、保護の対象者となるものをそれぞれご紹介します。
- 当該企業で従事する役員
- 当該企業で従事する労働者
- 当該企業で従事していた退職者
- 当該企業取引先の労働者
公益保護は、当該企業で従事する「役員・労働者・退職者」に加えて、「取引先の労働者」もその対象となります。「役員」は、取締役・執行役・会計参与・監査役・理事などの、その企業の経営に従事をしている人物が対象になります。
「労働者」は、その企業で従事する正社員やアルバイトはもちろん、派遣社員も対象として含まれます。さらに、当該企業の「退職者」についても保護の対象になります。ただし対象となるのは「1年以内の退職者」、「派遣での勤務終了から1年以内の労働者」です。そのため、たとえば退職から2年が経過している労働者が当該企業についての内部告発を行ったとしても、保護の対象にはなりません。
原則として、保護の対象になるのは、上記のように当該企業の従事者本人のみに限りますが、例外的に、「労働者本人の意思によって通報を代行する家族などの第三者」であれば保護対象としてみなされます。また、上記のような当該企業に直接従事をしている者だけではなく、商品を納入していた卸売業者、コンサルティング会社などといった、当該企業と「取引をしていた相手先の労働者」も保護対象となります。
保護の内容
公益通報を行った通報者に対して行われる保護の内容も具体的に見ておきましょう。
労働者
労働者については、不当な「解雇」、降格や減給やその他の職務上の差別などの「不利益な取り扱い」、「損害賠償請求の禁止」などが具体的な保護内容です。
退職者
退職者については、退職金の不支給などといった「不利益な取り扱い」、「損害賠償請求の禁止」が規定されています。
役員
役員についても同様で、「不利益な取り扱い」、「損害賠償請求の禁止」が規定されています。
なお、いずれも「内部告発が理由によるものであること」というのが条件です。その処分が内部告発とは別の理由によるものである場合は、別問題です。たとえば内部告発を行った労働者に対して、そのことを理由に解雇を言い渡すことは当然できません。
しかし内部告発とは別に、労働者が企業の重大な機密情報を外部に漏洩させていた場合には懲戒処分をすることができます。あくまで、ここで保護される内容は「内部告発を理由として行われる行為に対しての保護である」という点を留意しておきましょう。
通報先の機関
通報先の機関としては、先にもご紹介をしていた「社内の内部告発用窓口」、「行政機関」、「報道機関・マスコミ」のいずれもが対象になります。なお、行政機関の窓口についてはそれぞれ事例によって通報先が異なります。これについては、消費者庁のホームページから、通報先・相談先の機関を検索することができます。
公益通報の要件
次に、公益通報の要件を確認します。
公益通報については、『公益通報者保護法』で定められる「公益通報」に該当するものがその要件とされています。「公益通報」に該当するためには
①公益通報の対象者による通報であること
②通報内容が通報対象に該当する事実であること
③適切な機関へ通報をすること
が必要とされます。
「①公益通報の対象者による通報であること」と「③適切な機関へ通報をすること」の詳細については先に確認をしたとおりです。②の「通報対象に該当する事実」というのは、法令違反となる「犯罪行為」・「過料対象行為」・「犯罪行為や過料対象になるおそれのある行為」を指します。
特に注目をしたいのは、最後の「犯罪行為や過料対象になる“おそれのある”行為」です。通報内容がその段階では犯罪や過料対象行為ではなくとも、それに繋がるおそれのある行為、すなわち「そのまま放置していると犯罪・過料対象となる可能性がある行為」についても、その対象として認められています。
公益通報の手続き
公益通報の実際の手続きについては、それぞれの通報先によって方法が異なります。
会社の内部告発用窓口や報道機関・マスコミの場合であれば直接足を運んだり、電話やメールでの問い合わせによって相談を行ったり、具体的な方法を尋ねるのがもっとも最適です。
行政機関への通報の場合は、基本的には「インターネット」、「郵送」、「電話」で手続を行うことができます。それぞれのサイト名や郵送先、電話番号は、対象となる機関によって異なります。
通報先の機関を特定した上で、インターネット等を使いその機関の郵送先や電話番号等を調べることで、適切に手続きを進めることができます。もっとも確実なのは、対象機関への電話相談です。不明な点があれば、まずは一度、対象機関に電話で相談をし、指示の下で手続きを進めていきましょう。
公益通報に該当しないケース
「公益通報」に該当するためには、「①公益通報の対象者による通報であること」、「②通報内容が通報対象に該当する事実であること」、「③適切な機関へ通報をすること」が必要であることをご説明しました。反対に、これらの条件を満たしていない場合には、公益通報には該当しません。
たとえば、「通報をした者がたまたま不正の事実を知った一般の消費者であった場合」には、「①公益通報の対象者による通報」ではないため、公益通報に該当しません。また、単にモラルやマナーに反するなど「通報内容が犯罪行為や過料対象行為に該当しない場合」であれば、「②通報対象に該当する事実」ではなく、これも公益通報には該当しません。
それぞれの条件を確認して、通報内容が公益通報に該当するものであるかをよく確認しておきましょう。
内部告発する前の注意点
ここまで、内部告発の概要やその方法について確認してきました。内部告発には大きな意義があり、正しい方法を選択することによって、適切に対処ができます。しかし、内部告発にあたっては、いくつか注意点があります。それぞれ確認していきましょう。
適切な通報先を決める
内部告発をするにあたって、まず考えるべきなのは告発先です。公益通報者保護制度においても、公益通報に該当するためには「適切な機関へ通報をすること」という要件が課せられていました。もし通報先を誤ってしまえば、保護の対象から外れてしまいます。
たとえば「内部告発をSNSで行ってしまった場合」には、社会へ不正を周知させることはできますが、公益通報者保護制度の対象から外れ、場合によっては会社から懲戒処分を受けたり、損害賠償請求をされる可能性があります。適切な通報先を選択することは非常に重要です。内部告発を決断した際には、まずは適合する通報先を決めておきましょう。
内部告発をすることは誰にも言わない
内部告発については、極力誰にも言わないように注意をしましょう。内部告発のデメリットには、「人間関係の悪化」や「報復のリスク」がありました。自身が通報したことが知られなければ、このような問題が生じることはありません。
もちろん告発者が誰であるかを自ずと特定されてしまうことはありますが、自分からそれを口外するべきではありません。また、内部告発することを口外してしまえば、情報が渡り、証拠隠滅を図られるおそれもあります。
たとえば、上司の不正を内部告発しようと考えていて、そのことを同僚に口外してしまうと、同僚からその噂が広まり、最終的に上司の元に内部告発の情報が流れてしまうかもしれません。
こうなってしまえば、その上司は調査が入る前に証拠隠滅や証拠ねつ造を図り、不正の事実の隠蔽を試みる可能性があります。
このようなことを想定して、内部告発については誰にも口外しないように心がけましょう。
匿名性が確保される方法を確認しておく
内部告発をすると、人間関係の悪化や報復のリスクがあります。こういった問題を避けるために、自身が告発したことをバレないようにしたいと考えるのは当然です。そんなときには、匿名性が確保される告発の方法を確認しておきましょう。
公益通報についても、原則は実名ですが、不正の事実を客観的かつ確実に証明することができれば、例外的に匿名での通報が認められています。また、その他にも「代行サービスの利用」といった方法もあります。告発者を保護するために、内部通報の代行を行うサービスです。このような代行サービスは、告発者の秘匿性を最重要視した上で告発を請け負ってくれるため、匿名性が確保されます。
確実な証拠をたくさん集める
内部告発をする前には「確実な証拠を多く集める」ということも心がけましょう。
内部告発によって不正の事実が認められるためには、その事実を確実に証明する必要があります。もし証拠が不足していれば、不正が認定されない可能性があります。場合によっては、不正の事実が認められないにも関わらず、自身が告発をしたことだけがバレてしまうかもしれません。告発をする前には、確実な証拠を可能な限り多く集めるということを意識しましょう。
証拠の中に自分の情報が入っていないか確認する
匿名で内部告発を行いたい場合には、「証拠の中に自分の情報が入っていないか」という点にも注意しましょう。
話し合いや裁判になった際に、通報を受けた告発先は不正をしていた側に対して、「不正が事実であった」ということを説明するために証拠物を相手方に提示します。そのため、不正の事実を裏付ける証拠は、不正をしていた側も目にすることになります。
もし、この証拠の中に自分の情報が入っていれば、匿名通報であった場合でも間接的に自身が告発をしたことが相手方に知られてしまいます。証拠集めに熱を入れるあまり、こういった部分は見落としがちです。あらかじめ証拠の中に自分の情報が入っていないかを確認した上で、証拠として提示をするようにしましょう。
内部告発の証拠を固めるには客観的視点が必要
先にも確認したように、内部告発をするにあたっては告発をする内容の事実証明をしなくてはなりません。そして事実証明には証拠を揃えなくてはなりませんが、これらの証拠を固めるためには客観的視点が必要です。なぜなら、第三者となる告発先にその事実を認めてもらわなくてはいけないためです。
自分の感覚だけで証拠を集めても、第三者からは不正の事実を推定することはできず事実認定に至らないかもしれません。特に企業による不正は法令違反だけではなく、重大な社会問題にもなる可能性があるため、通報を受けた告発先は慎重にその事実を見極める必要があります。
「第三者が見たときにこの証拠は確かなものになるか」、「第三者が見たときにこれらの証拠だけで事実認定ができるか」といったように、常に客観的に考えることが大切です。第三者である告発先が確実に事実認定ができるように、客観的視点を持って証拠を集めるように心がけましょう。
また客観的視点での証拠がどのようなものであるか判断が難しい場合や、そのような確実な証拠の収集が難しい場合には、探偵などの調査の専門家に依頼をするというのも有効な方法です。
事例
ここでは内部告発の実際の事例を簡単にご紹介していきます。
※なお守秘義務に反しないよう、内容の一部に改変を加えております。
Bさんは、安定した業績を誇るエンターテイメント会社であるA社に勤務しています。しかし、その内部では上層部による取引先との賄賂の受け渡しが横行していました。それらの不正実態を知ったBさんは、A社を変えたいと考え内部告発を決心します。
内部告発のためには、不正の事実が確認できる証拠が必要でしたが、賄賂の受け渡しの証拠を確保するのは困難です。そこでBさんは協力者と共に探偵に調査を依頼し、数ヶ月後、探偵は賄賂の受け渡しの写真を含む、有力な証拠を複数収集しました。
これらの証拠を基に、Bさんは社内に設置された内部告発用窓口へと告発を行います。探偵から受け取った有力な証拠があったことにより、不正の事実は認められ不正に関与をした上層部数人と取引相手は検挙されることとなりました。
その後、この賄賂問題はニュースでも取り上げられ世間にも広く周知されたことから、A社では不正防止のために厳しく努めることになりました。内部告発をしたBさんも、公益通報者保護制度に基づいて保護がなされ、これまでと変わらず勤務を継続することができています。
まとめ
本記事では、内部告発の概要とリスク回避の方法や保護制度についてご紹介をしました。
会社内での不正は放置せずに是正をすることが望まれます。しかし直接的に相手に対して注意を促すのは気が引けますし、トラブルに発展するおそれもあります。このときに有効となるのが内部告発です。
正しく内部告発を行えば、制度の保護対象となりリスクを回避することもできます。それぞれの方法や制度の概要を改めて確認した上で、適切に内部告発を行うように心がけましょう